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「スイングスピードを信じろ!」ロッテ・佐藤都志也を“打てる捕手”に変えた村田修一コーチとの二人三脚「男・村田」が授けた“360発の奥義”
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2024/07/22 11:04
今シーズン打撃が開花したロッテの佐藤都志也
横浜スタジアムのライトスタンドに飛び込むアーチ。右の強打者だった村田コーチの現役時代のホームランは逆方向も多かった。イメージは叩き潰す。そのアドバイスもまた、佐藤都の頭の中のイメージと綺麗に合致した。実際に試すと、明らかな感覚の違い、これだという安心感を手にした。
うまくはまった助言
村田コーチはその後、背番号「32」が開花していく姿を目にすることになる。
「オープン戦の途中からものすごくよくなっていた。元々、モノはよかったけどね。打撃のヘッドスピードとか。それを生かしたスイング。変化球に泳がされないように、ひっかけないようにイメージして、ストレートがきたら最短距離でパチーンと打ってみようかというのがうまくいった」
オープン戦は打率.286で終えると3月29日の本拠地ZOZOマリンスタジアムでのファイターズとの開幕戦では8番捕手で自身初のスタメンマスクを被り1安打。その後も打線のキーマンとして安打を量産していった。
神宮で飛び出した理想的な一発
「よく我慢して反対方向に打っている。引っ張りたいところをちょっと我慢して、内側から反対方向に打とうというバッティングが見える。無理やり打たなくなった。強引にならなくなった。打者なら誰でもそうだけど、去年は何としても引っ張ってかっこよくホームランを打ちたいという思いがあった。ホームランはライトスタンドがいい、というのがあったと思うけど、今はない」と村田コーチは目を細める。
忘れもしない今季初本塁打は雨が降りしきる5月28日、神宮でのスワローズとのナイトゲーム。3回2死走者なし。カウント2-2からレフトスタンドに運んだ。レフトフライかと思われた打球はグングンと伸びた。逆方向への一発。佐藤都は確かな手ごたえを感じながらホームを踏んだ。ベンチで出迎えた村田コーチは「反対方向にも入るとわかったやろ。ナイスホームラン」と誰よりも喜びハイタッチを交わした。理想的な一発だった。
「坂本勇人の代走で…」
ここまで安打の半数以上が逆方向からセンター。新しい打撃スタイルでマリーンズの打てる捕手として存在感を見せている。打順も3番、5番、6番などの主軸を任されるようになった。そんな前半戦の活躍が評価されて、佐藤都は監督推薦でプロ入り初めてオールスターゲームに出場することが決まった。
「初出場。せっかく頑張っているのだから、オールスターでも活躍をして欲しい」と村田コーチはエールを送る。自身は5度、出場した夢の球宴。思い出を問われると「代走で出場したことがある。坂本(勇人)の代走」と豪快に笑った。