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熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「交渉能力、監督のコネだ」日本はOAなし、アルゼンチンは“W杯優勝トリオ招集”ブラジル人記者が斬る背景「五輪メダルの可能性は…」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2024/07/10 17:01
カタールW杯優勝メンバーのアルバレス。アルゼンチン代表は本気モードでパリ五輪金メダルを狙いに来ている
OAとしてCBニコラス・オタメンディ(ベンフィカ)、FWフリアン・アルバレス(マンチェスター・シティ)、GKヘロニモ・ルジ(アヤックス)を招集したのだが、いずれも欧州強豪クラブに所属し、2022年W杯優勝メンバーで、A代表の一員としてコパ・アメリカ(南米選手権)に参戦中。オタメンディとアルバレスはA代表の中心選手で、ルジは控えだが2016年リオ五輪に出場している。
彼らは、欧州での長く過酷なシーズンを終えて、コパ・アメリカとパリ五輪を「はしご」する。6月から7月にかけて欧州ではEURO、北中南米ではコパ・アメリカが行なわれているわけだが――これらの大陸選手権を戦い、なおかつその直後に開幕する五輪に出場するのは世界でこの3人だけだ。この現状について、チアゴ記者はどう見ているか。
――今回、パリ五輪へのOA選手招集でアルゼンチン協会がやってのけたことは、過去にもほとんど例がないはず。「離れ業」とも「クレイジー」とも表現できると思います。彼らは、なぜこんなことができたのでしょうか?
「まず、選手自身に『何が何でもパリ五輪に出場して金メダルを取りたい』という強い思いがあり、選手本人と協会関係者がクラブに対して強力かつ巧妙に、言うなれば手練手管を尽くして働きかけたからだろう。彼らの高度な交渉能力の賜物だ。
その背景には、アルゼンチンがW杯を3度、五輪を2度制覇している世界有数の強豪国であり、以前から世界トップレベルの選手や指導者を多数欧州へ送り込んでいるという輝かしい実績がある」
マスチェラーノ監督が持っている“欧州のコネ”
――パリ五輪でアルゼンチンを率いるハビエル・マスチェラーノ監督は、現役時代は世界屈指のボランチで、バルセロナ、リバプールなどで活躍した。彼自身、20歳で迎えた2004年アテネ五輪で優勝し、4年後にもOAとしてチームを牽引して連覇を遂げています。
「選手として二度、五輪を制覇するだけでもすごいが、さらに監督としても優勝するとなると世界フットボール史上初、さらにはおそらく世界スポーツ史上初の快挙となる。あれだけの名選手だった彼には、欧州のフットボール関係者と強力なコネがある。OAとして呼びたい選手や23歳以下の有力選手の招集を、自ら欧州クラブ関係者に働きかけたはずだ。
そして、アルゼンチン人は五輪で優勝することの意義と重要さを知り尽くしている。だからこそ『また勝ちたい』 と強く願う。これは、ワールドカップを制覇したことがある国がその素晴らしさを体感して『是が非でもまた優勝したい』と考えて、ありとあらゆる努力を積み重ね、いかなる犠牲でも払うのと同じだ」
――とはいえ、欧州でのシーズンを終えて大陸別選手権、そして五輪を休む間もなく戦うのは、選手にとって非常に負担が大きいのでは?