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慶大キャプテン、関大キャプテン、東北福祉大の学生コーチも!「自主性重視」には逆行も…奈良・生駒ボーイズOBはなぜ令和でも活躍できる? 

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清水岳志

清水岳志Takeshi Shimizu

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posted2024/07/05 17:04

慶大キャプテン、関大キャプテン、東北福祉大の学生コーチも!「自主性重視」には逆行も…奈良・生駒ボーイズOBはなぜ令和でも活躍できる?<Number Web> photograph by Takeshi Shimizu

現在も強豪であり続ける生駒ボーイズ。指導スタイルは「令和の主流」ではないが、それゆえに学ぶものがあると選手はいう

 生駒ボーイズは全国大会にはのべ27回の出場がある。これまでにプロ野球選手5人を輩出している。中村和希(元楽天)、宮川哲(ヤクルト)元山(西武)植田(千葉ロッテ)、井上(ソフトバンク)だ。

 一学年、平均して20人ほどで決して多くはない。それは先にも書いたが、練習場が辺鄙なところにあり、中学生単独では通うことが不可能で父兄が車で送迎する必要がある。家族の協力が不可欠なのだ。

「入団説明会の時にご父兄にご不便を強いることを話します」

 植田太平会長はそういう。そこは敬遠される材料でもあるので、チームからは選手勧誘をしないし、入団テスト的なものもない。高校野球同様に今や中学野球も有力選手の獲得競争が激しくなっているのが現状で、生駒ボーイズにとってウィークポイントと言っていい。では、なぜ、ここまで好成績を収めてきたのか。慶大の本間がいう。

生駒ボーイズ「強さのワケ」は?

「何と言っても指導者陣の充実度だと思います。人数も多いですし、みなさん実績のある方ばかり。選手は信頼してついていく」

 バルセロナ五輪の中心選手、今はパナソニックのGM総監督の中本浩氏、千葉ロッテの光山英和コーチ、PL学園で桑田、清原らと甲子園優勝、元オリックスコーチの松山秀明氏が顧問に名を連ねる。松山氏と植田会長は青山学院大の同期だ。

 コーチ陣は名門校出身の精鋭が十数人在籍する。施設も充実していて、専用のグラウンドは3面あって大阪桐蔭、大阪産業大のグラウンドが近いという立地で、目標が身近だ。練習用のボールもNPBチームから古くなったものを譲ってもらうなど数千球あるという。

 進学先は大阪桐蔭、履正社、天理、智弁学園、健大高崎など全国の強豪高校だ。しかし、勝利至上主義とは一線を画す。藤原は代表、監督と面談をして自分に合っている高校を進めてもらったという。

「何が何でも甲子園に出ろ、という事ではない。僕は勉強もちゃんとやりたかったので、進学校の佐久長聖高は合ってるなと思いました。野球が強ければいい、というのは逆に嫌やった」

 将来のことを考えてくださった、という。植田会長には“子供のため”という基本的な思いがある。ある時、光山顧問が雨の中、数時間、泥だらけになって子供を教えてくれたことがあった。「それで目が覚めた」からだ。育成方針はあくまで人間教育だ。野球が出来るのは親や周りの者たちのおかげ。感謝を忘れるな、と会長も監督も常に言う。思春期の子供は時に、親への感謝を口にすることに照れがある。でも藤原は「めっちゃ、感謝を伝えた」という。

「手紙をよく書きました。誕生日、母の日、父の日、結婚記念日とか」

【次ページ】 「令和の風潮」には逆行も…独自の道を行く

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