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打者・大谷翔平とイチローを比較「誰が見ても対極だが…」2人の打撃論から判明した“全く別の凄み”…シーズン200安打も“現実的な理由”
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2024/07/03 17:01
自身初の三冠王も視野に入れるドジャースの大谷翔平
では、大谷翔平の“打撃論”は?
では、大谷はどうだろうか。
彼の場合、表現方法が自身の感覚論であることが多い。21年のスプリングトレーニング。打率.548、5本塁打、OPS1.603と爆発した際にこんな表現をした。
「一番はやっぱり見え方ですね。構える前にしっかりと投手がいい角度で見えている。構えた時にも同じように見えて、踏み込んだ時にも同じように見えるので。構えに入る前からしっかりそういう角度で見えている時っていうのは比較的良いのかなと思います」
打撃に関し、イチローは自身の感覚を口にすることは少ない。反対に大谷は心の内が読み取れるような発言がなかなか出てこない。意識してのことと受け取るが、その一方で『へぇー!』『さすが!』『すごい!』と感嘆詞が思わず飛び出てしまうのは、ふたりの共通項だ。
大谷の打撃論は「理解できないところに凄みがある」
23年6月。大谷は敵地レンジャーズ4連戦で12打数7安打、4本塁打、8打点、打率.583と凄まじい活躍を見せた。しかも本塁打はすべてが中堅から逆への特大弾。この打撃について問うと彼はこう答えた。
「逆方向には勝手に行っている感じなので。一番それがいいんじゃないかなと思う。やっぱり見え方がいいので。構えの段階で。結果云々でなく、なるべくしてなっている感じがいいんじゃないかなと思います」
『逆方向へ勝手に行っている』、『なるべくしてなっている』。凡人の野球記者には到底理解できない感覚論。理解できないところに凄みがある。これが大谷の打撃だと思っている。
日本が誇るふたりの超絶打者が語る打撃へのアプローチと感覚。それぞれの言葉をファンの方なりに分析してもらえたらと感じるが、日米でイチローと大谷と対戦した投手たちが語る共通の言葉がある。
「単打なら仕方なしと思って攻めるしかない」
このふたりだからこそ「200安打」に到達できるという、最高の証言なのかもしれない。