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打者・大谷翔平とイチローを比較「誰が見ても対極だが…」2人の打撃論から判明した“全く別の凄み”…シーズン200安打も“現実的な理由”
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2024/07/03 17:01
自身初の三冠王も視野に入れるドジャースの大谷翔平
「ただバットを振って……、走ること、投げること、すべてがそうですけれども、ただそれをして3000本はおそらく無理だと思いますね。瞬間的に成果を出すことはそれでも出来る可能性はありますけども、それなりに長い時間、数字を残そうと思えば、当然脳みそを使わなくてはいけない。まぁ、使いすぎて疲れたり、考えていない人にあっさりやられることもたくさんあるんですけど(苦笑)、でも、自分なりに説明はできるプレーをしたというのは僕の根底にありますから。それを見ている人に感じていただけるなら、とても幸せですね」
対戦投手の実感「決め球は次の対戦で必ず打ち返される」
イチローと対戦した投手、選手たちが口を揃えて語る言葉がある。
「彼は本当に頭のいい選手だ。そこが凄いんだ」
イチローのプロ生活28年間の要は、失敗と向き合ってきたことにある。そして、同じ失敗は繰り返さない。そんな彼の打撃アプローチを、対戦を通じ、表現してくれた日本人投手がいる。ふたりの対戦の場は日本だったが、その投手はイチローの技術、頭脳に感服し、ただただ白旗をあげた。語ったのは、通算224勝、優勝請負人の名をほしいままにした工藤公康だった。
「通算では5割以上打たれているんじゃないかな。でもたまには抑える時もあるんだよね(笑)。イチローが凄いのは、抑えた時の配球、決め球を必ず覚えていること。そして、次の対戦ではその攻めは通用しない。必ず打ち返される。ある時、内角からのカットボールで抑えたことがあった。投手とすれば、この攻めは次に繋がると思う。でも、彼には通用しない。抑えた配球、決め球は次の対戦で必ず打ち返される。ここが凄いんだよ。攻めるところがなくなっちゃう。イチローは抑えられません(苦笑)」
イチローは常に相手投手のウイニングショットを仕留めることで対戦の優位性を保とうとした。その上で相手投手のオプション、攻め手さえもどんどん奪っていく。そんな蟻地獄のような投手との対峙。数多くある彼の打撃アプローチの基本はここにある。