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同学年・藤井聡太21歳から「タイトル奪取あるのでは?」伊藤匠の才能をA級棋士・中村太地が語る「“寝て起きたら強くなる”時期に2人は…」 

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中村太地

中村太地Taichi Nakamura

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2024/06/20 06:01

同学年・藤井聡太21歳から「タイトル奪取あるのでは?」伊藤匠の才能をA級棋士・中村太地が語る「“寝て起きたら強くなる”時期に2人は…」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

第9期叡王戦で藤井聡太叡王に対して2勝2敗としている伊藤匠七段。中村太地八段が知る強さの背景とは

 伊藤七段の棋風は〈ストレート真っ向勝負〉という感覚があります。

 定跡の最先端を行っていて、王道と言われる戦法や戦術を駆使して勝利をものにしていくタイプです。私自身も2022年のABEMAトーナメント予選で2度、対局したことがあるのですが、フィッシャールールという早指し戦の中でも「序盤研究がすごいな」と感じながら対局しました。たとえば「Aの戦型に対してはこれ、Bでくるならばこちら」という戦い方がご自身の中で整理されているようで、こちらの意図をすぐに察してくる印象がありました。

升田幸三賞となった「持将棋定跡」に感じること

 とはいえ、序盤に特化しているわけではないのも特徴です。駒がぶつかってからの中盤戦以降のタフさと正確さもありながら、攻めも受けも強いし柔軟性があります。

 それは2023年度の升田幸三賞に選ばれた、持将棋定跡にも当てはまるかなと個人的には感じます。

 持将棋とはお互いの玉が敵陣に入った状態で、詰みがなくなる局面のことで、両者合意の上で引き分け扱いとなります。持将棋になるケースとしては非常に長手数になることが大半なのですが、棋王戦第1局では129手で成立しました。

 この1局を棋士として非常に興味深く見ていました。さらに注目したのは対局を振り返った伊藤七段の思考です。

〈全てが事前想定通りではなく、実際に現れた変化は本命ではなかった。数ある想定の中で藤井棋王が選んだ形に対して、この形は持将棋になるのでは〉という感覚だったそうです。それを踏まえて私がすごいと感じたのは、「伊藤七段はありとあらゆる変化を想定している」という点でした。

 事前研究を深くした中で、実戦でそれを整理してどんな状況でも対応する。それを実現できる棋士はなかなかいません。その上で持将棋という結論になった、と考えると、AIだけを頼っているのではなく、自身の頭で1つ1つ考えているのだなと伝わってきました。

 序盤研究が非常に深い上で、盤上で起きていることの認識、中終盤の強さを兼ね備えている。それが伊藤将棋の特徴と言えるのではないでしょうか。

藤井・伊藤の〈年齢離れ〉した一面とは

 藤井叡王、伊藤七段ともに年齢は20代前半で、世間一般的には「若手」という捉え方かと思います。ただここまで触れた特徴からは〈年齢離れ〉していると感じる面があります。

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