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「“高橋藍の兄”だからサントリーに入れた…とか」“最強の弟”をもつ兄の葛藤…高橋塁が初めて明かす胸の内「それでも僕にはやる選択肢しかない」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySUNTORY SUNBIRDS
posted2024/05/28 17:41
サントリーサンバーズの優勝に貢献した高橋塁(24歳)。来季は弟・藍とチームメイトになる
バレーボールを始めて以後、常に思い描く中心にいながら最後はそれすらも叶わず、集大成とも言うべき学生最後の試合で試合に出られない悔しさを味わいながらも「高橋藍の兄」として取材を受ける。それでも、嫌な顔をすることもなく、むしろ笑みをたたえながら応じる。そんな姿を幾度も見てきた。
塁は日大を卒業後、サントリーサンバーズへ入団した。腰の状態は万全ではなく、試合に出場する機会はほとんどない。2シーズン目からはコンディションが整い、痛めた左腰をかばって崩れたフォームを修正。日々の練習でハイレベルな選手たちと対峙しわずかながらも成長と手ごたえを感じる機会を得た。だが、それでもなかなか出場機会は訪れなかった。
飛躍的に活躍の場を広げていく弟と比べていたわけではない。でも、一人の選手として、先の見えない状況に焦らないはずがなかった。
「小学生から大学まで、学生時代はずっとキャプテンで、試合に出るのが当たり前やったから、試合に出られない、ユニフォームも着られない経験自体が初めて。こんなにチャンスがないんだって正直思ったし、モチベーションが下がった時期もありました」
「藍の兄だからサントリーに入れたのかな、とか」
「高橋藍の兄」だからVリーグの選手としていられる――時折、そんな聞きたくない声を耳にしたし、SNSでも目にした。
「自分でもそう思うことはありますよ。(藍の兄だから)サントリーに入れたのかな、とか。思った、じゃなくて今も思っています。でも、それでも僕にはやる選択肢しかなかったし、これからだって、やらない選択肢はない。だったら自分が選手として出られるように準備する。何で狙うか、証明するか、と考えた時に、たどりついたのがピンチ(リリーフ)サーバーだったんです」