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オリンピックへの道BACK NUMBER
「コンビニでお菓子を凝視し、食べた気に…」引退から2年、寺本明日香が明かす“食事制限に苦しんだ現役時代”「気合と根性で乗り切っていた」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTadashi Hosoda
posted2024/06/06 11:00
体操女子日本代表として長く活躍し、現在は至学館大学の女子監督を務める寺本明日香
「体重が軽い方が練習もこなしやすい。だから…」
食の管理は自らの意志によるもので、所属していたクラブからの厳しい食事や体重管理はなかったという。
「規制もないし毎日先生がチェックすることもなく、自分で管理する方針でした。ただ、体重が軽い方が動けるし、練習内容もこなしやすいんですよ。重いとしんどい。だから私の場合は自分で制限していた感覚です。この技をやりたい、じゃあどういう体型にしないといけないのかを考えて、食事を管理しないといけないみたいな感じでした」
日本代表として10年。長年にわたり活躍できた理由をこう語る。
「どの子も言うと思うんですけど、体操は体が小っちゃいほうが楽。(活躍できた理由として、)私も小っちゃいことは少なからずあるとは思いますね。体ももともとそんなに弱い方ではなかったのと、怪我をした際も(五輪、世界選手権の選考会の1つである)4月の全日本選手権には間に合わせることができていたのも幸運だったと思います。(チームの軸としての期待に対しては)あんまり考えないようにして、その分練習しようとしていました。気合と根性ってあまりよろしくないけど、現実として最終的には気合と根性で乗り切っていた感じです」
現役引退を決断した日
それでもやがて競技生活に終止符を打つ決断のときは訪れた。
「体が思ったように動かないというのはありましたし、これ以上に目指すものがないというのもあって、終わるためにどうしたいかという思考になっていました。でもこのままフェードアウトして終わったら絶対に後悔する。だから引退試合をやって後悔のない演技をしようと思いました」
その舞台と定めた2022年4月の全日本選手権へ向けて本格的な練習を再開したが、やはり怪我はつきまとった。
「以前のような練習量でやっていると再び右足が痛くなって、練習はやりたいのにできないみたいな感じが続いて、右足甲が疲労骨折を起こして。それが分かったのは全日本の1カ月前、レントゲンでびしっと線が入っていて。だからといって全日本をやめるわけじゃない、最後だからどうなってもいいと思いました。最初は4種目出る予定でしたが、跳馬は走れないし蹴れないから難しいので他の3種目をちゃんとやろう、と。床は表現力でなんとかなるから、こんなもんかっていうくらい技を落として、バー(段違い平行棒)はちゃんとできましたけど、平均台のラストは今までのD難度以上だったのを、初めてC難度にしました」