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オリンピックへの道BACK NUMBER
「コンビニでお菓子を凝視し、食べた気に…」引退から2年、寺本明日香が明かす“食事制限に苦しんだ現役時代”「気合と根性で乗り切っていた」
posted2024/06/06 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Tadashi Hosoda
正門から坂をのぼった先の体育館で、彼女はジャージをまとって待っていた。
「肩書きとしては、助教と体操競技部の女子監督兼コーチです」
穏やかな笑顔で語るのは寺本明日香だ。日本体操女子の主軸として約10年にわたり活躍し、2022年4月の全日本選手権をもって競技生活から退いた。その後は、指導者としての道を歩んでいる。
女子体操界を牽引し、今も体操界で活躍を続ける寺本に、あらためて現役時代について、引退を決意した経緯、指導者としての思いなどを尋ねた。《NumberWebインタビューの第1回/後編に続く》
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明かした思い「嫌いになりそうでした。体操が」
寺本明日香の競技人生は輝かしい成績に彩られている。2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロと2度オリンピックに出場し、リオの団体では4位、個人総合では日本女子52年ぶりの入賞となる8位の成績を残している。
そしてオリンピックだけでなく、日本が危機に陥るたびに救ってきたのが寺本だ。2011年、高校1年生で初めて世界選手権代表に選出されると、女子団体予選の直前練習で負傷した選手にかわって出場、チームトップタイの得点をあげて見事にピンチヒッターの重責を果たし脚光を浴びた。リオの出場権をかけた2015年世界選手権、東京五輪の出場権をかけた2019年世界選手権では主将を担った。しかも2019年は村上茉愛が負傷により団体メンバーから外れる中、全4種目中3種目で日本勢トップの得点をあげて出場権獲得の原動力となった。
そんな寺本は、第一線で活躍を続けた選手時代を振り返る中で、ふとつぶやいた。
「嫌いになりそうでした。体操が。無理やりやっている感覚だったので」
怪我に苦しんだ現役時代
葛藤をもたらすきっかけは、2020年に負った左足アキレス腱断裂にあった。懸命の治療とリハビリを経て復帰したが、東京五輪代表にはわずかに届かなかった。
ただ、左アキレス腱よりむしろ右足に長く苦しんできたという。