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「絶対にやりなさいとは言わない」食事制限、体重管理もナシ…大学の指導者に転身した体操・寺本明日香(28歳)の今「すごく癒されるんです」

posted2024/06/06 11:01

 
「絶対にやりなさいとは言わない」食事制限、体重管理もナシ…大学の指導者に転身した体操・寺本明日香(28歳)の今「すごく癒されるんです」<Number Web> photograph by Tadashi Hosoda

体操女子日本代表として長く活躍し、現在は至学館大学の女子監督を務める寺本明日香

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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Tadashi Hosoda

日本体操女子の主軸として約10年にわたり活躍し、2022年に現役を引退した寺本明日香(28歳)。現在は至学館大学で体操競技部の女子監督として活動する寺本を訪ねた。《NumberWebインタビュー全2回の後編》

◆◆◆

 2022年4月の全日本選手権をもって引退した寺本明日香。同年9月、至学館大学体操競技部の女子監督に就任、昨年4月には体育科学科の助教にもなった。

「引退のときは、これから自分が何をやりたいのか基本的には決まっていませんでした」

 その後、色々思案や行動した結果として現状となる形に。

「何も分からないのにいきなり社長に就任したみたいな感じです(笑)。選手としてはキャリアがあったかもしれないけれど指導歴はゼロ。強豪校に行って何を指導できるのかと思ったし、トップではない違う世界も見てみたい、いい勉強になると思いました」

体操は部活。勉強も大事だし、バイトもある

 スケジュールや練習メニューを管理し、試行錯誤しながら指導にあたってきた。

 至学館大学の体操競技部は、寺本の言葉にあるように決して強豪というわけではない。寺本が築いてきたキャリアと大きく異なる。

「私はもう体操に人生を捧げていたんですけど、ここの子たちは違います。体操は部活で勉強も大事だしバイトもある。ギャップがあったし、最初の方はけっこう強く言っていた部分がありましたが、今では強く指摘しすぎるとよくないと思うようになりました。

 適度な距離感とその子に合った声かけが大事で、こういうときはこういう声かけをした方がいいという絶対的なものはないんだな、ということも感じました。同じ言葉かけをしても、いい方向に行くことも悪い方向に行くこともある。その子の受け止め方は性格によるから、空気感とかその子の表情とか、心理的な要素をちゃんと見ないと指導はできないですね」

体重も食事も「全く管理してないです」

 指導のスタンスは、無理して引っ張り上げるのではなく、どこまでやりたいのか、成長したいのか選手自身のモチベーションを大切にし、目標達成のためのアプローチを考える。体操ではよくある食事制限や体重管理についてもこう語る。

「してないですね。体重も全く管理してないです。1カ月に1回インボディ(体成分分析)を使って結果は見ますけど、何も言わないです。ただ、『もしこの技がやりたかったら、ここら辺まで絞らないと危ない』ということは伝えます。その先は彼女たち次第、絶対的にやりなさいとは言わないです」

【次ページ】 指導をする中で感じた“体操界のある問題”

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