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あの江夏豊が絶賛「最後の300勝投手」鈴木啓示とは何者だったのか?「バケモンかいな」低迷の3年を経て…怪物の逆襲がはじまった日
text by
太田俊明Toshiaki Ota
photograph byKYODO
posted2024/05/26 06:00
「最後の300勝投手」鈴木啓示とは何者だったのか?
現王者・江夏豊と比較…どちらがNo.1か?
では、当企画の現チャンピオン江夏豊とのベストシーズン対決である。鈴木のベストシーズンは、パ・リーグの完投数、完封数、無四球試合数、勝利数、奪三振、防御率、WHIPで1位になった1978年になる。このうち、奪三振以外は鈴木の生涯ベストの数字になっている。(赤字はリーグ最高、太字は生涯自己最高)
【1968年の江夏】登板49、完投26、完封8、勝敗25-12、勝率.676、投球回329.0、被安打200、奪三振401、与四球97、防御率2.13、WHIP0.90
【1978年の鈴木】登板37、完投30 、完封8、勝敗25-10、勝率.714、投球回294.1、被安打234、奪三振178、与四球42、防御率2.02、WHIP0.94
完投数は先発完投にこだわった鈴木がリード。完封数、勝利数は互角。勝率でも鈴木が上回っている。
一方、当企画で重視する“打者圧倒度”を見ると、1試合当たりの被安打数は、江夏の5.47に対して、鈴木7.15と江夏が大きくリード。1試合当たりの奪三振数は、江夏の10.97に対して鈴木5.44と、ここはさすがにシーズン奪三振の世界記録を樹立した68年の江夏が圧倒。鈴木も入団3年目には305奪三振を記録したが、技巧派に変身後の13年目では分が悪かった。
防御率は、江夏の2.13に対して、鈴木が2.02とわずかにリード。WHIPは江夏の0.90対鈴木0.94と、これは微差で江夏。被安打率、奪三振率で圧勝し、WHIPでもわずかに上回った江夏のタイトル防衛とする。
それにしても、この年の鈴木の1試合あたりの与四球数1.28は見事だ。針の穴を通すと言われた稲尾和久(西鉄)のベストシーズンである1961年の与四球率1.60をも大きく上回っている。技巧派に変身してからも決して打者から逃げなかった鈴木の真骨頂を表す数字と言えるだろう。