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姉と兄が相次いで死亡…悲運の一族に生まれた“ガラスの天才少女”の運命は? 幻の三冠牝馬の逸話「顔も仕草も愛らしく、どこにこんな力が…」
posted2024/05/23 11:41
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
強さと脆さが同居した「幻の三冠牝馬」の血統背景
日本ダービーを勝っても不思議ではない能力を見せながら、何らかの事情で出走が叶わなかった馬は、よく「幻のダービー馬」と呼ばれる。クラシック出走権のなかったオグリキャップや、骨折のためクラシックを棒に振ったヤマニングローバルなどが、そうだ。
ならば、この馬は「幻の桜花賞馬」か。いや、もっとスケールが上の「幻の三冠牝馬」のほうが相応しいかもしれない。
顔も仕草も愛らしく、穏やかな性格で、どこにこんな力を秘めているのか不思議だった芦毛の牝馬、レーヴディソール(2008年生まれ、父アグネスタキオン、栗東・松田博資厩舎)のことである。
レーヴディソールは、フランスでGIを勝った母レーヴドスカーの6番仔だ。
きょうだいには活躍馬が多く、5歳上の兄ナイアガラは3連勝ですみれステークスを勝ち、3歳上の姉レーヴダムールは阪神ジュベナイルフィリーズ2着、2歳上の兄アプレザンレーヴは青葉賞優勝、1歳上の兄レーヴドリアンはきさらぎ賞2着、3歳下の妹レーヴデトワールは紫苑ステークス優勝、4歳下の弟レーヴミストラルは青葉賞と日経新春杯優勝、さらに下の3頭を含め、日本で生まれた仔はみな勝ち鞍を挙げている。
しかし、姉レーヴダムールは、キャリア2戦目の阪神ジュベナイルフィリーズで僅差の2着となったあと、故障から復帰するための調整中に死亡。兄アプレザンレーヴは屈腱炎のため3歳秋で引退。そのすぐ下の兄レーヴドリアンは菊花賞で4着と好走したあとに腸捻転で予後不良となるなど、強さと脆さが同居したファミリーでもあった。
レーヴディソールを管理した松田はすぐ上の兄レーヴドリアンも管理していた。また、主戦騎手となる福永祐一も同時期にこれら2頭のレースで乗っており、このファミリーの特性を知悉していた。