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MotoGPクラスが排気量850ccの新レギュレーション発表…速さを取り戻しつつあるヤマハはV型4気筒を選ぶのか?
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2024/05/16 17:00
リザルトは転倒リタイヤだったものの、果敢な走りで母国の観客を湧かせたフランスGPのクアルタラロ
また、現在のMotoGPクラスは空力戦争が激しくなっているが、この部分でもエアロパーツの効果を低減させるルールが実施され、スタート時やコーナーの立ち上がりで車高を変えるデバイスが禁止となる。ほかにもGPSデータの共有など、パフォーマンスの低いチームやライダーにタイム向上のためのチャンスを与えるなど、これまで以上の接戦を目指す内容となっている。
このレギュレーション変更はシーズン開幕前からパドックで話題になっており、ほとんどのメーカーはすでに27年に向けて新しいエンジンの開発に着手している。そこでもっとも注目されるのが、現在MotoGPクラスに参戦する5メーカーの中で唯一直列4気筒エンジンを採用しているヤマハが、どういうエンジンを採用するのかである。
直4なのかV4なのか
ヤマハワークスのマッシモ・メレガリ・チームダイレクターは、以前から「ヤマハがV型4気筒エンジンを採用する可能性は?」という質問に「いかなる選択肢も除外していない」と答えている。ライバルメーカーの技術者に聞くと、「エンジンの設計上、直4よりV4が有利」と異口同音に答えてくれる。だからこそ、5メーカー中4メーカーがV4を採用しているのだが、新しいルールは直4に新たな可能性を与えると分析する技術者もいる。
ボアが6mm、4気筒で24mm減少することで、直4のネガティブな要因のひとつであるエンジン幅の減少が可能となるからだ。となれば、MotoGP時代になってから直4で多くのタイトルを獲得してきたヤマハが、はたしてV4に移行するのだろうか? という疑問も浮かぶ。実際、メレガリ・チームダイレクターは、「もし、他メーカーのほうが経験値の高いV4を選択した場合、(技術の蓄積など)経験を積むのに時間がかかることは間違いない。変更するには、しっかりとした確信がなければ」とも語っているが、果たしてヤマハはどう決断するのだろうか。
クアルタラロは今シーズン序盤に26年までヤマハに残留することを決めた。そして、27年以降もヤマハに残るかどうかは、これからのマシンとニューエンジンの開発状況で決まるといってもいい。マルケスと並ぶ「天才ライダー」と言われているクアルタラロ。「もう一度、僕らの夢をかなえることができると思う」というクラルタラロのこれからに注目したい。