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MotoGPクラスが排気量850ccの新レギュレーション発表…速さを取り戻しつつあるヤマハはV型4気筒を選ぶのか?
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2024/05/16 17:00
リザルトは転倒リタイヤだったものの、果敢な走りで母国の観客を湧かせたフランスGPのクアルタラロ
ル・マンのパドックには観客と関係者が混在するエリアがあり、関係者が駐車場からサーキットを出る際には、大勢のファンと酔っ払いがうようよいるエリアを通過しなくてはならない。この数年は、ヤマハの低迷にイライラを募らせるクアルタラロ・ファンの怒りが日本人スタッフに向けられ、そこを通過する際、かなり威圧的な攻撃を受けることがあったのだという。我々報道陣も夜のイベントが始まる前にサーキットを出て、ホテルに戻って仕事をする者が多い。フランスGPはシーズンを通してもっとも熱いグランプリだが、とにかく酔っ払いの多さに閉口するグランプリでもあるのだ。
話は逸れてしまったが、フランスGPでは低迷を続けてきたヤマハ陣営に復活の兆しが見えてきたことも事実。今年から成績が悪いメーカーに対する新しい優遇措置が実施されているが、ヤマハには早くもその効果が出始めているようだ。
この新ルールは事実上、低迷するホンダとヤマハへの救済措置である。長年、MotoGPクラスを席巻してきた日本のメーカーにはある意味屈辱的で、憤慨するOBも多い。
優遇の内容は手厚く、通常はシーズン中に禁止されているエンジン開発やエアロパーツのアップデート、日数が規定されているレギュラーライダーの開発テストなどが自由に行える。次戦カタルーニャGPまでの間にホンダとヤマハはイタリアのムジェロでのプライベートテストを予定しており、優遇措置の効果が本格的に出るのはこれからになると予想される。
新レギュレーションの主な変更点
日本メーカーが復活に向けて本腰を入れる一方、フランスGP前には2027年から実施されるMotoGPクラスの新しいレギュレーションが発表された。
もっとも大きな変更は排気量が1000ccから850ccへ、ボア(シリンダー内径)が81mmから75mmになったこと。さらに燃料タンク容量が22リットルから20リットルへ、1シーズンに使用できるエンジンの数は7基から6基へとそれぞれ減る。また、CO2排出を低減する100%再生燃料の使用義務付けなど、最高速を抑えつつ安全性や社会に適合したモータースポーツを目指す。
今回の変更でボアは大幅に縮小されたが、ストローク(シリンダー行程)はこれまでとほぼ変わらないので、エンジン回転数は現状の1万9000回転前後を維持することになる。しかし、最高出力は現状の290~300psから250ps前後まで下がることが予想され、昨シーズン360km/h前後を記録した最高速度も確実に低下する。ラップタイムでいえば1秒から2秒は落ちることが予想されている。