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井上尚弥が「ボクシングやってみる?」と直接スカウト…幼なじみのJリーガー・山口聖矢が29歳でプロボクサーになるまで「目標は新人王」 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2024/05/15 17:01

井上尚弥が「ボクシングやってみる?」と直接スカウト…幼なじみのJリーガー・山口聖矢が29歳でプロボクサーになるまで「目標は新人王」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

5月16日にライト級の東日本新人王トーナメント初戦を迎える山口聖矢。井上尚弥をきっかけに始まったボクシング人生について語ってもらった

「記事のスクリーンショットを貼り付けたメッセージも来ました。『いま、何をしているの?』と。ナオと幼なじみという事実を知らない人も多かったので、びっくりしたようですね。隠していたわけではないのですが、あえて言う必要もないかなと思っていました」

勝負ごとに年齢は、関係ないと思っています

 29歳からの新しいチャレンジ。プロサッカー選手として、アスリートの経験を積んできた自負がある。基礎体力、足腰の強さには自信を持っており、自らを追い込むメンタルも若いボクサーに負けているつもりはない。プロボクサーとしてのスタートは遅いのかもしれないが、山口は晴れやかな表情できっぱり言う。

「勝負ごとに年齢は、関係ないと思っています。勝つか、負けるかだけ。高校サッカーに打ち込んでいるときも言われました。『ピッチに入れば、先輩も後輩も関係ない』って。ボクシングも同じです」

 プロテスト合格から9カ月。2023年8月30日、ライト級(61.23kg以下)4回戦のプロデビュー戦を迎えた。さすがに試合の前は不安に襲われた。この日のために練習は積んできたものの、まだ分からないことだらけ。サッカーとは違う緊張感がある。ただ、ロープをくぐると、不思議とすっと肩の力が抜けて、冷静になれた。スポットライトが当たるのは、後楽園ホールのリングだけ。客席の様子はほとんど見えなかったという。

「暗かったので、リングでは緊張しなかったんですかね。サッカーの場合は、スタンドに座る観客がすごく見えるので」

井上尚弥は「まず新人王が最初の目標だな」

 暗がりのリングサイドにはWBC・WBO世界スーパーバンタム級統一王者(当時)の井上、応援席にはSC相模原の関係者、ファン・サポーターらも駆けつけていた。負けるわけにいかなかった。1カ月前、山口が井上―スティーブン・フルトン戦後に感動して涙をこぼしていると、一緒に見ていた井上の母親から「次は聖矢の番だよ」と言われていたのだ。知った顔ばかりが見守るなか、1ラウンドに強烈な右ストレートを打ち込み、鮮やかなTKO勝利を飾った。周囲は初白星を祝福してくれたが、この1勝は始まりに過ぎない。

【次ページ】 ネリ戦前に「早く聖矢の試合を見たい」

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