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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥が「ボクシングやってみる?」と直接スカウト…幼なじみのJリーガー・山口聖矢が29歳でプロボクサーになるまで「目標は新人王」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/05/15 17:01
5月16日にライト級の東日本新人王トーナメント初戦を迎える山口聖矢。井上尚弥をきっかけに始まったボクシング人生について語ってもらった
「『ボクシング、やってみる?』って。たぶん軽いノリみたいな感じだったのですが、『じゃ、やって見ようかな』と。その場でナオが(父親であり、トレーナーの)真吾さんに電話したんですよ。真吾さんが大橋秀行会長に話をして、『井上家で面倒をみます』という流れになりました」
引退してから感じていた「物足りなさ」
もちろん、溶接の仕事は続けながらである。朝8時から17時までは会社でみっちり働き、夕方から練習する日々が始まった。ひょんなきっかけだったかもしれないが、取り組みは真剣そのもの。ジムに通い始めると、元プロアスリートの血も騒いだ。
「やるからには上を目指したいなって。試合に勝ちたいという気持ちが出てきました。今までずっと勝負の世界に身を置いてきたので、引退してから何か物足りなさを感じていたんです」
球技と格闘技では競技性はまったく異なるが、リング上で目の前の相手と拳を交わすことに抵抗は覚えなかった。
ナオのすごさを実感
「サッカーをしているときからバチバチに体をぶつけるスタイルだったので、殴り合うことに対して、怖さはなかったです。それよりも、相手にパンチを当てる難しさを痛感しました。そもそもパンチって、簡単に当たらないんですよ。始める前は『殴れば、いいんだろう』と思っていましたが、喧嘩とボクシングは全然違いますね」
グローブを着けてリングに入ると、幼なじみの見方も変わってきた。以前はKOの山を築くパンチ力ばかりに目が向いていたが、距離の取り方、細かい技術のすべてが次元の違うレベルだった。
「ボクシングを始めて、ナオのすごさがより分かりました。真似したくても、誰も真似できないんですから」
幼なじみという事実を知らない人も多かった
初心者の山口は井上家の指導の下、基礎から学んでいった。モンスターからは「基本のジャブとワンツーを極めれば、日本チャンピオンにはなれる」と助言され、地道にコツコツと努力を重ねた。同年11月にはC級プロライセンスを取得。メディアで『井上尚弥の幼なじみがプロテスト合格』と報じられたことで、驚いたのはかつてのサッカー仲間たちだ。