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スリルと興奮はすさまじいが…流血もあったRIZIN“素手ボクシング”は本当に安全か?「グローブ着用よりもダメージは少ない」という主張も
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2024/05/06 17:02
むき出しの拳で殴り合う篠塚辰樹とJ.マルチネス。篠塚が笑みを浮かべる一方で、マルチネスの顔からは流血も見られた
「ボクシングやMMAよりダメージは少ない」は真実か
しかしながら、当時のUFCに対しても、そして現在のベアナックル・ボクシングに対しても、素手による殴り合いには「見た目が野蛮」「スポーツとはかけ離れている」といった批判や、「なぜ時代に逆行したことをするのか?」という疑問が投げかけられる。
そうした意見に敏感に反応するように、UFCは1997年7月27日の『UFC 14』からオープンフィンガーグローブの着用を義務づけた。そして2000年11月17日の『UFC 28』からは現行のユニファイド・ルールが採用され、出場選手の健康チェックがより厳格化されるようになった。
そんなUFCの流れと逆行するように、なぜ21世紀になってベアナックル・ボクシングは再び台頭してきたのか。そもそも近代ボクシングは合法スポーツとしての権利を勝ち取るため、ベアナックルによる殴り合いを禁止しボクシンググローブの着用を義務づけることで世の中に認められた経緯がある。
BKFCの創設者で元プロボクサーのデイヴィッド・フェルドマンは「ベアナックル・ボクシングで多いのは顔の裂傷だけで、実はボクシングやMMAより外傷性脳損傷や拳の骨折は少ない」と主張する。そうした医学的データが2018年にワイオミング州で認められたことで、BKFCは合法スポーツとして大会を重ねられるようになったという。
すでに日本で有名なブアカーオ・バンチャメークもBKFCに出場しており、今春からはあのコナー・マクレガーが運営する「マクレガー・スポーツ・アンド・エンターテイメント」がBKFCの共同運営会社に名を連ねるようになった。
時代に逆行するように見えながらも医学的データを基に再び世に出てきたベアナックル・ボクシング。何が危険で、何が安全なのか。ベアナックルで殴打されたことによるダメージについては、さらに研究されるべきだと思うのは筆者だけではあるまい。
しかし、賽は投げられた。新しい興奮を味わった我々はもう後戻りできないのか。