相撲、この技、この力士BACK NUMBER
元横綱稀勢の里 二所ノ関親方が徹底解説
第18回:宇良「本領は“居反り”にあらず」
posted2024/05/02 09:00
text by
二所ノ関寛Hiroshi Nishonoseki
photograph by
Takayuki Ino(Illustariton)
大阪での春場所、勝負審判として土俵溜まりに座っていると、ご当地出身力士である宇良関の人気を肌で感じました。彼が登場すると、場内のボルテージが一気に上がるのです。前頭筆頭で6勝9敗と負け越しはしたものの、3大関から白星を挙げるなど内容には見るべきものがありました。
宇良関の特徴といえば、みなさんはアクロバティックな技を連想すると思いますが、私は「基本に忠実」であることが幕内上位で相撲が取れている要因だと思っています。
印象的だったのは12日目、明生関との取組です。私は宿舎で弟子とテレビで見ていたのですが、宇良関は右足を支柱のようにしておっつけを見せ、下から上へと相手を斜めに持ち上げていくような相撲を見せました。こうなると、どんな相手でもまわしに手が届かなくなり、宇良関のペースとなります。私は弟子に「これこそ立ち合いのお手本。こうやって相手の良さを消していくんだぞ」と解説したほどです。まさに基本に忠実で、正攻法の相撲でした。