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“初昇格でJ1首位”FC町田ゼルビアと東京ヴェルディの哲学はどう違う? 16年ぶりJ1勝利の夜に城福浩監督が「やり方を変えない」と断言した理由
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/05 17:05
4月3日、第6節の湘南ベルマーレ戦で2008年10月18日以来となる“J1での勝利”をあげた東京ヴェルディ。選手の表情にも安堵と充実感がにじむ
城福監督はハーフタイムに、66分に、70分に、選手を入れ替えていく。そのたびに攻撃が活性化していき、75分に直接FKの流れからCB谷口栄斗がヘディングシュートを突き刺す。さらに86分、森田に代わって出場したFW山見大登が、ペナルティエリア内左から鋭い一撃を突き刺す。ガンバ大阪から期限付き移籍中の24歳は、1得点1アシストの活躍で勝利を呼び込んだ。
城福監督の哲学「とにかくやり方を変えないのが大事」
J1での勝利は、実に16年ぶりである。試合後の城福監督は「生みの苦しみが続いていたので、勝点3を取れたのはすごく良かったです」と切り出した。開幕から5試合連続で勝利を逃しても、メンバーを大幅に代えることはなく、システムを修正することもなかった。
「なかなか勝てないのはもちろん難しい状況ですけれど、我々が目指しているものをやり続ければ、絶対に結果はついてくる。それは一昨年の半年間も、去年もそうだったので、とにかくやり方を変えないのが大事で。変えないなかで早く選手に自信をつけさせてあげたい、との思いがありました。やり方を変えずにもぎ取った勝点3なので、この成功体験を大事にしたいと思います」
J2からJ1へ戦いの舞台を移しても、継続してきたものを磨き上げる。主体的にゲームを運び、相手を揺さぶり、守備の穴を探し、突いていく。ズバ抜けた「個」はいなくとも、ピッチに立つ選手が同じ絵を描くことで突破口を切り開く。観る者の気持ちを前のめりにするそのサッカーは、はからずも、周囲がヴェルディに求めるものと重なり合う。守備に軸足を置いて勝点を拾っていったり、ロングボールを多用したりするサッカーは、このチームには似合わない。
自分たちが大切にするロマンを求めながら、どこまでリアルを突き詰めることができるか。ヴェルディの16年ぶりの挑戦は、観る者の感情を目まぐるしく動かすのだ。