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“初昇格でJ1首位”FC町田ゼルビアと東京ヴェルディの哲学はどう違う? 16年ぶりJ1勝利の夜に城福浩監督が「やり方を変えない」と断言した理由
posted2024/04/05 17:05
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
JIJI PRESS
ロマンを求めて、リアルを得る。
16年ぶりにJ1で戦う東京ヴェルディは、理想と現実を両立させようとしている。
リアリズムを徹底する町田に対して、ヴェルディは…
彼らは単なる昇格チームではない。プロ化以前から日本サッカーを牽引し、Jリーグ初年度と翌年に年間王者に輝いた。
Jリーグにおける栄光は、黎明期に限られる。3大タイトルの獲得は、2004年の天皇杯が最後だ。雌伏の時が長かったからこそ、J1へ復帰したヴェルディは各方面から期待を寄せられている。
周囲からの期待に、どうやって応えていくのか──。
同じタイミングでJ1に昇格したFC町田ゼルビアは、現実路線を突き進んでいる。日本代表歴を持つGK谷晃生、コソボ代表歴を持つCBイブラヒム・ドレシェヴィッチ、18年ロシアW杯日本代表のCB昌子源、韓国代表FWナ・サンホら、国内外から即戦力を獲得した。相応の資金力を持った昇格チームが採用する、J1残留の手段である。まずはJ1とJ2を往復するエレベーターチームになることを避け、そのうえでチームのスタイルを作り上げていくのが彼らの方向性なのだろう。
J2制覇の武器となったロングスローは、J1でも重要な得点パターンとなっている。セットプレーと守備の強度が強調された試合運びも、かなり現実的と言える。
ヴェルディはどうか。
シーズン開幕の時点で、新外国人選手は獲得しなかった。代表クラスの即戦力も加入していない。補強のターゲットは、J1で出場機会の限られていた若手や中堅、J2のクラブで主力を担っていた選手だ。名前を聞いただけで誰もがプレーをイメージできるような選手は、率直なところ少ない。
昨シーズン途中に期限付き移籍で加入したFW染野唯月を、引き続きメンバーリストに加えたのは価値ある“補強”だった。その一方で、染野とともに攻撃に違いをもたらしたMF中原輝は、所属元のセレッソ大阪からサガン鳥栖へ完全移籍した。22年に加入して23年はチーム4位の試合出場数を記録したDF加藤蓮も、横浜F・マリノスへ完全移籍していった。
もっとも、将来有望な若手や主力選手との別れは、残念ながら毎年の恒例と言っていいものだ。ヴェルディから国内外のチームへ移籍した選手を集めれば、J1でも上位を狙える陣容ができ上がる。