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水原一平氏の通訳能力、米でのリアル評はどうだった? 在米プロ通訳者が分析「水原氏は憑依型」「並の通訳ではない」後任との最大の違いは…
text by
奥窪優木Yuki Okukubo
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/03 11:00
名コンビだった大谷翔平と水原一平元通訳。その通訳能力は現地のプロから見ても卓越したものだったという
WBCでは「並の通訳ではなかなかできない芸当」も
さらに木城氏は、「英語の質問を大谷選手に伝える際も、大谷選手の周波数で見事に言葉を選んでいる点は特筆すべき」とも指摘する。
例えば、WBCで日本がアメリカを下して優勝した直後のインタビュー。元レッドソックスのデビッド・オルティーズが大谷に、アメリカチームのラストバッターで、当時はエンゼルスのチームメイトでもあったマイク・トラウトに対して投じたボールについて尋ねたときのことだ。
「Why you gotta get so nasty on him?」
「これは直訳すると、『なんでトラウトに対してそんなに意地悪だったの?』となります。しかし水原氏は大谷に対し、これを『なんでトラウトにそんなにエグい球を投げたのですか?』と訳しました。オルティーズが試合中のどのシーンを指して質問しているかを瞬時に判断し、最適な言葉を選んで訳出する。しかもWBCという大舞台です。これは並の通訳ではなかなかできない芸当です」
一方、彼が解雇されたのちに臨時通訳を任せられたドジャース編成部選手育成・能力開発主任のウィル・アイアトン氏の通訳スタイルは、「憑依型」ともいえる水原氏と比べ対照的だという。
翻訳会社ゆあねっと所属で、スポーツ界の通訳も手がける中川宣隆氏が話す。
「日本時間3月26日に行われた大谷選手の会見で、本人が『数日前まで彼がこういうことをしていたのも全く知りませんでした』と発言した部分をアイアトン氏は『Up until couple days ago I didn’t know this was happening』と翻訳しました。つまり、『こういうこと』という部分もほぼそのままに訳出しています。これは大谷選手をはじめ日本人が使いがちな婉曲表現ですが、英語に直訳すると曖昧さが拭えません。水原流の翻訳であれば、おそらく『スポーツ賭博をしていたのも全く知りませんでした』と補足すると思います」