甲子園の風BACK NUMBER
“飛ばないバット”でも「長打は必要。悔しさ100%」報徳学園センバツ2年連続準V…“夏への宿題”は「ロースコアに持ち込めば」以上の力
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/04/01 17:00
2年連続センバツで準優勝となった報徳学園。夏に向けて甲子園から何を持ち帰るか
失策が敗因になるのは野球の定石とはいえ、新基準のバットでは、その傾向がより強くなる。相手を圧倒する打力がない限り、守備のミスは致命的になる。
報徳学園は今大会、5試合で2失策しかしていない。しかも、中央学院戦でセカンドの山岡に記録された失策は打球の勢いが弱く、グラブに収めて一塁に送球しても内野安打になる当たりだった。そして、決勝でも見せたように、投手が安打を覚悟した打球を内野手がアウトにしてきた。
「ロースコアに持ち込めば勝てる」
報徳学園の選手たちは接戦への自信を深めた。1回戦は愛工大名電に延長10回の末、サヨナラ勝利。準々決勝の大阪桐蔭戦も、準決勝の中央学院戦もロースコアの展開を制した。
優勝した健大高崎は“打”のチームだった
打撃ではセンター方向を中心に低く強い打球を徹底した。5試合で放った安打43本のうち、単打は40本。実に93%を占める。長打は二塁打の3本だけで、全てを5番・安井康起選手が放っている。打球が飛ばない新基準バットの特徴を踏まえ、バントや盗塁を絡めてコツコツと得点を積み重ねた。堅い守備があるからこそ、接戦を勝ち切るスタイルを貫けた。
決勝で対戦した健大高崎は対照的なチームだった。
昨秋の公式戦は9試合でチーム打率.397。大会ナンバーワンの打力は甲子園でも相手の脅威となった。失策で失点しても、ちぐはぐな攻撃が続いても、長打で局面を打開する。準決勝の星稜戦は象徴的だった。バントやバスターといった小技がことごとく決まらない。青柳博文監督は試合後、こう話している。
「監督のミスを選手たちに助けてもらいました。全くサインが上手くいかなかったので、中盤以降のチャンスでは細かいことをせずに打たせました。うちらしい野球ができたと思います」
健大高崎は今大会のチーム安打数が41本。本塁打こそなかったが、長打は8本に上った。決勝でも1回に森山竜之輔選手の二塁打で2点差を追いつき、3回は先頭の斎藤銀乃助選手の三塁打をきっかけに得点した。
「長打が出ませんでした…必要ですね」
健大高崎は2つの失策を記録しても決勝で勝利した。報徳学園は失策なく、好守を連発しても1点届かなかった。試合後、大角健二監督は「長打」を繰り返した。