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中学時代は水泳部の選手も…部員は「オール県内出身者」の公立校が《センバツベスト8》進出のナゼ 徳島・阿南光“地元の仲間”で挑む下剋上
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by(L)KYODO、(R)JIJI PRESS
posted2024/03/26 11:03
初のセンバツベスト8進出を決めた阿南光の高橋徳監督(左)。プロ注目のエース・吉岡暖(右)も地元の阿南市出身だ
泥臭く「数をこなす」ことの大切さ
今年の徳島県には、生光学園の153キロ右腕の川勝空人をはじめハイレベルなピッチャーがひしめく。高橋は突破口について、迷いなく言い切った。
「バッティングでも守備でも、とにかく数をこなす。そうしていくうちに、自然と自分の形というものができあがってくるんです」
好投手対策で言えば、プロ注目のエース・吉岡の存在が大きかった。吉岡の中学時代からのチームメートでもある、ショートの矢藤颯太が言う。
「吉岡がシートバッティングとかでいつも投げてくれるんで、そこで自分たちのレベルが上がってきているって思えるのが大きいです。徳島はいいピッチャーがたくさんいますけど吉岡のボールを打ってきているんで、自信を持って試合に臨めています」
吉岡という高水準のピッチャーと毎日のように対峙する。そこに、監督の「ストレートをどんどん振っていけ」という基本理念も相まって、チームの打力が洗練されていく。秋の徳島大会3位決定戦で、生光学園の川勝を攻略して10-1で勝利し、四国大会出場を決められたのも「数」が奏功したからでもあった。
選手個人に目を向ければ、チームの打力向上の背景を明かしてくれた矢藤も、「数」によって成長したひとりである。
2年生の夏までサードを守っていたが、新チームになってからはショートとなった。まだ不慣れな面があったとはいえ県大会初戦で犯したエラーを反省した矢藤は、「1日500球ノック」を日課としたという。そのことによって「守備が上達した」と真っすぐな目で話していた。
多くの鍛錬で成果を上げたかと思えば敗け、リベンジを誓う。それが四国大会だった。