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中国選手がまさかの涙…女子卓球日本はなぜ“最強・中国”を追い詰められたのか? 張本美和、平野美宇が試合後に語った「悔しさ」の正体
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2024/02/26 11:03
中国との決勝、最終5戦目に登場し五輪金メダリストに肉薄した張本美和(15歳)
2018年には伊藤が、冒頭に記したように世界選手権団体戦決勝で対日本選手37連勝中だった劉詩雯に勝利。また、同年のジャパンオープン・シングルスでは陳幸同、王曼昱を破って優勝、スウェーデンオープンでは準々決勝以降、劉詩雯、丁寧、世界ランク1位(当時)の朱雨玲を次々に破り優勝を果たした。伊藤の存在は中国卓球界でも大きな脅威と目されるまでになり、それがために徹底した伊藤の研究、対策を行うほどだった。
それでもオリンピックや世界選手権となると中国の壁は高かったが、2021年の東京五輪では混合ダブルスで伊藤・水谷隼が劉詩雯・許昕を破り日本卓球界史上初の金メダルを獲得。中国との距離をさらに縮めた。
布石となっていた、早田ひな“58年ぶり”の快挙
もう1つ、今大会につながったのは、個人戦で行われた昨年の世界選手権だ。準々決勝で早田が王芸迪を破り、最終的に銅メダルを獲得したのである。中国の選手から勝利をあげて表彰台に上がるのは実に58年ぶりであった。
少しずつ結果を残すことで中国を倒すことは夢物語ではなく、現実として捉えられるようになれば、練習や研究、対策に注ぐエネルギーも変化する。これまでの取り組みを含む成果が、今大会の準優勝だった。
そしてまた、中国との距離は縮まった。平野の「こんなに悔しいのは初めて」という思いも次への糧となる。
第5試合で敗れた張本は、試合の後、涙を流した。
「今はただただ悔しい気持ちでいっぱいなので、これからはただただ頑張るだけかなと思います」
今度こそ、中国を越える。
そんな決意とともに迎えるのがパリ五輪になる。