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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「いわゆる天才ですね」監督も脱帽…箱根駅伝《優勝候補筆頭》だった駒澤大イチの“逸材ランナー”はなぜ最後の箱根路を走れなかった?
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byAFLO
posted2024/02/17 11:05
3月で駒大を卒業する唐澤拓海。1万m27分台の記録を持ち周囲からは「天才」との呼び声も高いランナーだが、大学生活は紆余曲折があったという
「1年生は掃除や仕事など覚えることが多くて、最初はただ怒られないようについていくのに必死でした。先輩たちからは『昔に比べると良くなった』とは聞くんですけど、正直、しんどかったです」
ただし、競技になれば話は別だった。
走る距離が延び、質も高くなる大学の練習で、壁を感じるルーキーは少なくない。だが、唐澤はあっさりと「練習でついていけないと思ったことはないですね」と話す。
才能の非凡さ。多くの陸上関係者がそれに気づいたのは、彼が花咲徳栄高3年生の時だった。
高校は陸上の強豪校ではなく、都大路(全国高校駅伝)にも出たことがなかったが、都道府県駅伝で埼玉県代表に抜擢。高校生区間の4区5kmを走り、7人抜きの快走で区間タイ記録を打ち立てた。
「陸上エリート」と言うよりはむしろ、自由な環境で伸び伸びと才能を育んできた印象だが、そもそも唐澤にとっての陸上競技とはどんなイメージなのだろうか。
「あまり特別感はないですね。箱根駅伝よりもバラエティ番組の方が好きだったりするので。でも、同じ埼玉出身の設楽(悠太・元東洋大)さんとかには憧れてました。誰ともキャラが被ってなくて、尖っているところが良いなって」
覚醒した2年時…関東インカレ「2種目で日本人トップ」
大学生活にも慣れ、コロナ禍も少し落ち着き始めた大学2年の春、唐澤は覚醒する。
初めて出場した関東インカレで、5000mと10000mの長距離2種目で日本人トップ。5000mでは同期の鈴木芽吹にも先着した。
何かを変えたわけではない。ただ「調子が良かった」というのが彼らしい。2年生で初めて箱根駅伝の1区を任されたが、そこでも才能の片鱗が光った。中央大の吉居大和が驚嘆の区間新記録を打ち立てたが、唐澤も39秒差の2位につけた。
一方で、自己評価は控え目だ。
「嬉しいというか、ホッとしましたね。1区で出遅れなくて良かったなって。(同級生の吉居に先着を許したが)ちょっと横に出たらもう影も見えなくなっていて、落ちてくるかなと思っていたら全然落ちてこなかった。僕もけっこう調子が良かったんですけど、それよりもずっと速くて。でも、その後しゃべったわけでもないし、その時はリベンジしたいとも思わなかったです」