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実は“三笘薫50mドリブル突破”の起点は町田浩樹だった「冨安健洋とともに信じきれなかったのか…」大胆起用・森保采配に“共感した後の切なさ
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/02/09 17:03
町田浩樹は冨安健洋とのコンビをすでに試されていた。実は今大会のキーパーソンは、背番号15だったのかもしれない
前半32分、相手のFWデイビッドが下がってボールを受けようとした。それに対して町田は、インサイドハーフの田中碧と同じようなレベルにまで上がってアタック。パスを後ろからつつき、さらにそのボールを左FWの中村敬斗につないでみせた。
守備から攻撃の起点になる一連の動きは現代センターバックに必要とされる大事なプレーだ。実際に、筆者は出演した動画で、カナダ戦のマンオブザマッチとして町田を挙げさせてもらったほどである。
バーレーン戦、三笘の突破の起点は町田だった
町田の良さは、守備だけではない。次のプレーの展開を読んだ上でのボール奪取が上手いところにある。
その理由を探るときに思い浮かぶのは、言語化の上手な町田が口にする「ネガトラ」や「ポジトラ」という言葉だ。
専門的なワードなので簡単に説明すると――前者は「ネガティブトランジション」の略で攻撃から守備への切替えのこと、後者は「ポジティブトランジション」で守備から攻撃の切替えのことを指す。そうした言葉がサラッと出てくるのは、町田が普段からそれらを意識してプレーしているからだろう。
実際、今大会のバーレーン戦で途中出場した町田は短い時間で良さをいかんなく発揮した。
85分には相手クロスボールをダイレクトで三笘薫につなげると、三笘が50m超にもわたるドリブルでチャンスメイクし、浅野拓磨の決定機の起点となった。さらに93分にはセカンドボールに反応すると、2タッチ目で素早く三笘にパスをつけて、再び浅野の決定機の起点となった。何より、リスクを伴うパスを出しながらも、あの試合のパス成功率は100%(9本中で9本成功)だった。
町田のそういった資質は「良い守備から素早く攻撃へ」という森保監督のかかげる“コンセプト”にも合致しているのは言うまでもない。
板倉の実力を踏まえた上で、あの状況に限っては
なお、これだけは誤解なきように記しておくが、板倉が町田よりも劣っていると言いたいのではない。
筆者は2021-22シーズンに板倉がシャルケに移籍してから、所属クラブでの試合はほぼ全て映像で確認し、ボルシアMGでの試合はスタジアムに足を運んで取材している。カタールW杯の最後に「今回は(最終ラインを)5枚にしてやることが多かったので、チームメイトとの距離感が近かった。だけど、これから戦っていく上では、広いスペースを個人の力で守っていかないといけない」と語った板倉が、その宣言通りに努力をしている跡が見られた試合も多い。
たとえば、W杯翌月に行なわれたアウグスブルク戦やホッフェンハイム戦で見せた高いクオリティのプレーはその一例である。