サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「まあ、そうなるよな…」久保建英と前田大然の交代で“不吉な予感”が…イラン戦カメラマンが現地で撮影した“日本が力尽きた決定的瞬間”
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2024/02/06 17:01
突破をはかるアリレザ・ジャハンバフシュと、マークにつく守田英正。イランの決勝点はジャハンバフシュのPKによってもたらされた
カメラマンが見たイランと日本の「熱量の違い」
もしこれが前半ならば、たとえば毎熊が足を踏まれたり、上田や堂安律が激しく削られたりしたタイミングで、(仮に笛が鳴らなくても)倒れたままでいることで試合を止め、崩れたバランスを共有・修正する時間に充てる冷静さもあったかもしれない。だが、追い込まれた日本の選手たちはそうしなかった。とにかくすぐに立ち上がってボールを追いかけなければならない――そんな気持ちが上回っているようだった。
後ろから削られた堂安は、倒されてもボールの行方から目を離さなかった。勝利への執念を感じさせる光景だったが、チームに精神的な余裕が失われていたことを象徴しているようでもあった。
日本と比べて圧倒的多数のサポーターの盛り上がりによって、イランの選手たちは攻め疲れたり隙を見せたりすることなく、勝利だけを目指して激しく戦い続けた。「イランが勝利する」という予感が充満したスタジアムで、日本は最後の最後に力尽きた。
これまでの写真でも見られるように、どれだけ苦しい試合になってしまっても、選手個々の勝利への気持ちは強かった。しかし、イランのそれを上回っていたかと問われると、やはり疑問が残る。冨安は「勝ちに値しなかった」と言い、堂安は「負けに値した」とまで口にした。
撮影者の立場からしても、終了間際のPKでの決着という結末は妥当なものに思えた。敗退の悔しさよりも、「まあ、そうなってしまうよな……」というのが率直な感想だった。イランの選手から伝わってくる熱量は、それほどまでに違っていた。
PKの場面や試合終了の場面だけでも、尋常ではないエモーションを見せつけられた。ポジティブなものにせよ、ネガティブなものにせよ、この大会の日本の選手たちは相手チームよりも大きな感情を見せることはなかった。おそらく、優勝というミッションを達成したときに、ようやくリミッターが外れるはずだったのだろう。