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全米でも速報された23歳日本人ボクサーの訃報…穴口一輝の激闘から何を学ぶべきか「ボクシングには罪の意識を覚える試合が存在する」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2024/02/06 11:03
23歳の若さでこの世を去った穴口一輝。対戦した堤聖也や井上尚弥など多くの関係者、ファンが回復を祈ったが、願いは届かなかった
昨今のニューヨークの試合では選手が少々のダメージでも担架で運び出されるシーンが見受けられ、レフェリーのストップも早まった印象がある。コミッション、ドクターが動きやすいように試合時の動線がより厳格に定められ、2016年夏には興行時の医療費の保険料が大幅に増加された。この保険料の問題は大きく、その後、やや緩和されたものの、結果的にニューヨークのボクシングイベントは長期減少傾向となっている。
慎重な安全対策、早めのストップにしても、バイオレンスを求めるファンに必ずしも常に好評なわけではない。とはいえ、様々な変更のあとで、ニューヨークでは以降、リング禍が起こっていないことは評価されてしかるべき。そんな経緯から、ニューヨークの一部の関係者は業界の流れを変化させた一戦としてアブドゥサラモフ対ペレス戦を記憶している。
未来に向けて最善を期す
繰り返すが、穴口の痛ましい事故のあとで、日本のシステムに足りない部分があると糾弾したいわけではない。他国の方向性に倣うべきと言いたいわけでもない。加撃によって相手にダメージを与えることが目的のボクシングというスポーツにおいて、これから先も残念ながら事故は起こり得るのだろう。
ただ、そんな中でも、これまでに起こったことをすべて振り返り、学び、未来に向けて最善を期すことはできる。今回の興行でもリングから降りる際に足の痙攣など明らかに異常を感じさせた穴口への配慮、対応などは、改めて検証する必要があるに違いない。