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全米でも速報された23歳日本人ボクサーの訃報…穴口一輝の激闘から何を学ぶべきか「ボクシングには罪の意識を覚える試合が存在する」
posted2024/02/06 11:03
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
誰もがその可能性を恐れ、同時に覚悟もしていたニュースが2月2日に届いた。
昨年12月26日、有明アリーナで行われた日本バンタム級タイトル戦で堤聖也(角海老宝石)と激闘を演じ、判定で敗れ、以降は意識不明状態を続けていた穴口一輝(真正)が逝去。その悲報は瞬く間に業界内外を駆け巡った。
「Boxer Kazuki Anaguchi dies Friday at 23 from injuries sustained in Dec 26 fight, according to Japan Boxing Commission」
直後、ESPN.comのAppでもそんな短信の速報が届いたことが、この件のインパクトが日本に止まらなかったことを物語る。
当日の試合はESPN+が早朝、深夜の時間帯ながら全米生配信。世界的に評価されるボクサーとなった井上尚弥(大橋)の最新試合のセミファイナルだったこと、堤対穴口戦はどの国のファンをも沸かせる激しい内容の戦いだったこと、“Anaguchi”と“Tsutsumi”がしばらくXでトレンド入りしたほど話題になったこともあり、欧米の衝撃も小さくなかった。
「試合が終わってからずっと苦しむことなく、穏やかな顔をしたままでした。良く頑張ってくれた。本当に天国で安らかに休んで、見守ってほしいと思っています」
日本メディアを通じて伝わってきた山下正人会長の「苦しまなかった」という言葉が微かな慰めにはなるが、残されたものの悲しみを考えれば大きな救いにはならない。この試合にかかわった人々はもちろん、ボクシングを愛するすべての者の痛みが薄れることはない。リング禍が起こったあと、しばらくは業界全体が喪に服したような状態で日々を過ごすことになるのだ。