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「たとえば、住む家も変えたし…」石川祐希はなぜ“居心地の良さ”を嫌うのか? バレーボール界を牽引する28歳が目指す“とんでもない境地”
posted2024/02/03 11:01
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Noriko Yonemushi
石川祐希(ミラノ)は試合を変えられる選手だ。1月27日に行われたイタリアのカップ戦“コッパ・イタリア”準決勝で改めてそれを証明した。
しかも相手は、昨年12月に開催された世界クラブ選手権で優勝し、今回のコッパ・イタリアも制した最強チーム、ペルージャ。
初の決勝進出を目指したミラノは出だしがよく、石川をはじめ全員が高いスパイク決定率を残して第1セットを先取した。しかし第2セット以降、ペルージャのサーブとブロックディフェンスに苦しむ。石川と対角を組むマテイ・カジースキや、カジースキに代わったオスニエル・メルガレホがサーブで狙われて崩され、相手にブレイクされる展開。第2セットを失うと、第3セットは大差で奪われた。
「僕自身しっかりこの試合にコンディションを合わせて持ってきたので、1セット目からパフォーマンスはよかったと思うんですけど、途中、こちらのサーブレシーブがうまくいかなくて。僕のほうには(サーブを)打ってこないというのはわかっていたんですけど、何もできなかった」と石川は悔やんだ。
チームに火をつけた石川の闘志
ボローニャにあるウニポル・アリーナは、ペルージャの大応援団が打ち鳴らす太鼓の音と歓声に支配され、まるでペルージャのホームのよう。ミラノコートの空気は沈み、打開できないまま第4セットも序盤から連続失点し、8-16にまで点差を広げられた。
その中でただ1人、石川だけが、試合開始時と変わらない闘志を発し続けていた。自分が得点を決めた時だけでなく、むしろチームメイトが得点を奪った時のほうが激しく雄叫びをあげてガッツポーズを繰り返し、なんとか周囲に火をつけようとあがき続けた。
「いやもう『負けてたまるか!』と思ってずっとやっていたので。1点ずつ取っていくしかないですし、その1点で流れを変えていくしか解決方法はないので、1点取っては、吠えて。で、『まだいける』という感じが少しでもあれば、最後乗れるので。そこをなんとか僕が、点も取りましたけど、それ以外のところでちょっと頑張ったかなと」