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「たとえば、住む家も変えたし…」石川祐希はなぜ“居心地の良さ”を嫌うのか? バレーボール界を牽引する28歳が目指す“とんでもない境地”
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2024/02/03 11:01
今やミラノを牽引する存在となった石川祐希(28歳)。初タイトルを懸けたコッパ・イタリアは惜しくも準決勝敗退となった
悔やむのは第5セットのスパイクミス。序盤に3枚ブロックの指先を狙ったスパイクがアウトになった。
「5セット目は僕がちょっと疲れてしまって、スパイクミスをしてしまいましたし、決められるところで決められなかったので、そこだったかなと思います。僕が決めていれば、もうちょっと変わっていたかなと思います。4セット目はしっかりと逆転できたんですけど、最後勝てなかったので、ほんとに力が足りなかった。5セット目に負けたら意味がないので、最後まで、力を発揮しないといけない。
去年のコッパ・イタリアもここ(準決勝)で負けた。今年はここで勝ってファイナルに行くつもりでいたので、それがかなわなかったのは本当に悔しい。ここに一つのピークを持ってきていたので、パフォーマンス自体は存分に発揮できたと思いますけど、結局負けなので……。もっとチームの、雰囲気だけじゃなくて、チームメイトのパフォーマンスにいい影響を与えられるような能力が必要だなと改めて感じましたし、チーム全員がよくて勝つのが理想ですけど、チーム全員が悪くても、僕1人の力でなんとかできるというくらいのタフさは、やっぱり持っていないと、この先、勝っていけないというふうに感じました」
石川が目指す「世界一のプレーヤー」
「チーム全員が悪くても、1人の力でなんとかできるタフさ」
ずっと「世界一のプレーヤー」を目標に掲げてきた石川が、今自身に課すものはここまできている。
アウトサイドヒッターはそれぞれに武器と個性があってタイプが違うため、誰が世界ナンバーワンだと言いづらいところはあるが、総合力の高い石川は現在アウトサイドのトップの1人であることは間違いない。
だが石川自身が納得していない。昨年、「石川選手が考える世界一のプレーヤーとは?」と聞いたところ、こう答えた。
「チームを勝たせる選手です。どのチームに行っても勝つ。例えばカジースキみたいな選手が、やっぱりナンバーワンだと思います」
ブルガリア出身のカジースキは、セリエAや欧州チャンピオンズリーグで幾度も優勝を重ねたレジェンド。VリーグのジェイテクトSTINGSでも2019-20シーズンにチームのリーグ初優勝に貢献した。昨シーズンも38歳でトレントをセリエA優勝に導き、MVPを獲得していた。
今季はその優勝請負人がチームメイトになり、彼から吸収することを楽しみにしていたが、そのカジースキが今はまだ本調子とは言えない。
「彼はやっぱり気合いが入った時に素晴らしいパフォーマンスを発揮するので、もちろん頼りになります。ただ昨シーズンは(トレントで)オポジットをやっていたので、今サーブレシーブの部分で苦労していて、サーブレシーブでストレスがかかっているから、スパイクにも気持ちよくいけてないなというシーンが見られます。そこはカバーするべきところですし、残りは(リーグの)プレーオフしかないので、そこでは間違いなく上がってくると思う。
でも、彼がダメでも僕の力でなんとかチームを勝たせられるようにしなければいけないなと改めて感じたので、本当に、そこだけかなと思います」
穏やかな口調でサラッと言ってのけた。