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「たとえば、住む家も変えたし…」石川祐希はなぜ“居心地の良さ”を嫌うのか? バレーボール界を牽引する28歳が目指す“とんでもない境地”
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2024/02/03 11:01
今やミラノを牽引する存在となった石川祐希(28歳)。初タイトルを懸けたコッパ・イタリアは惜しくも準決勝敗退となった
ようやく火がついたのは、9-16の場面での石川のサーブから。強烈なジャンプサーブで相手を崩し、オポジットのフェッレ・レガースのスパイクでブレイクして追い上げを開始。石川のサービスエースやペルージャのミスで12-16。レガースのサービスエースなどでさらに点差を詰めると、メルガレホの強力なサーブから、石川が相手ブロックに吸い込ませる巧みなスパイクで得点につなげ19-19とついに追いついた。セッターのパオロ・ポッロは石川にトスを集め、石川はそれを決め続けた。
石川が再びサーブで崩しセットポイントを握ると、最後はパイプ攻撃で締めくくった。最大8点差を逆転してフルセットに持ちこみ、チームメイトと胸をぶつけ合い、吠えた。
ミラノのロベルト・ピアッツァ監督は試合後、「ユウキは完全に4セット目を変えた。ほぼ1人の力で」と讃えた。
しかし、初タイトルならず
だがペルージャにはミラノの勢いを押し返す力が残っていた。第5セットはミラノのスパイクを封じられ2-6とリードされた。そこから11-12と迫る意地を見せたが、最後はリリーフサーバーとして登場したウィルフレド・レオンにサービスエースを奪われ敗れた。
イタリアでの初の決勝進出、初タイトル獲得の夢は潰えた。
悔しさで石川の顔は紅潮し、瞳はわずかに潤んでいるように見えた。それでも、呆然とベンチに座り込んでいるチームメイト1人1人に声をかけ、ハグして回る。これでシーズンが終わったわけじゃない、と前を向かせるかのように。
ただ、やはり口をつくのは悔しさだった。
「負けてしまったので、本当に力不足だったなと思います」