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“ケチックス”という皮肉も…オリックス前オーナー・宮内義彦はそれでも「黒字化」を求め続けた パ・リーグ3連覇、常勝軍団を築いた88歳の“日本一の経営哲学”
posted2024/02/10 06:02
text by
宮内義彦Yoshihiko Miyauchi
photograph by
Sankei Shimbun
オリックス球団のオーナーを34年間にわたって務めた宮内義彦氏(現オリックス シニア・チェアマン)。2022年には日本一のオーナーとなった名物経営者が明かす、低迷期に考えていたこととは――。『諦めないオーナー プロ野球改革挑戦記』(日経BP、2023年12月18日刊行)より一部を抜粋して紹介します。(全3回の第3回/初回から読む)
赤字縮小を厳命…その場しのぎの経営に
もともとファンが一気に増えるようなことはなかなかありませんし、チームの成績も下降気味で盛り上がらないからグッズもあまり売れない。トップライン(売り上げ)はなかなか引き上げられません。
そんな状況でオーナーは赤字幅の縮小を厳命してくる。球団幹部や職員はどうしても、売り上げを伸ばすよりも支出の圧縮に意識が向きがちになります。選手の年俸や球団が使う経費をいかに少なくするか。オーナーである私の指示によって、球団は支出を抑える「ケチケチ作戦」を徹底したのです。
すると、ついつい「その場しのぎ」の経営になっていく。中長期的な選手の育成ではなく、今季だけの採算を優先して考える。
残念ながら、日本のドラフト制度はMLBのドラフト制度などと比べれば、戦力均衡を促す仕組みとしては十分ではありませんでした。戦力を高めて勝負をかける、時には雌伏の期間として耐えるという「両にらみ」の戦略を、ドラフト制度だけを通じて実現することは難しい。
板挟みになった歴代の背広組への感謝
球団は毎年のオフシーズンにとにかく来季を考え、即戦力でしのごうという短期戦略に走りがちになる。このような戦略は、なかなか事前の想定通りにはうまくいきません。即戦力として獲得したはずの選手が、ケガなどによって入団早々から戦力となれないことがよくあるのです。何とかして結果を残そうと球団は涙ぐましい努力を重ねてくれました。ただ結果がすべての勝負の世界。この戦略を続けていては、いい選手や将来有望な若手をなかなか集められません。