Number ExBACK NUMBER
“ケチックス”という皮肉も…オリックス前オーナー・宮内義彦はそれでも「黒字化」を求め続けた パ・リーグ3連覇、常勝軍団を築いた88歳の“日本一の経営哲学”
text by
宮内義彦Yoshihiko Miyauchi
photograph bySankei Shimbun
posted2024/02/10 06:02
オーナー最終年の2022年に26年ぶりの日本一を達成した宮内義彦前オーナー。低迷も栄光も味わった経営者が貫いた信念とは――。
「ケチックス」。優勝よりも採算性を意識してしまうような球団経営に対し、メディアからこう皮肉られました。それでも私は、「いくらお金を使ってもいいから強くなれ」と言ったことは一度もありません。球団の事務方である背広組は常にチームと親会社の間に板挟みになりつつ、両者をうまくつないでいく役目があります。私がオーナーを務める間に数多くの人に球団社長や球団代表などフロントをお願いしてきましたが、多くの方にとっては慣れない仕事でしたし、苦労が多かったのだろうと思い、今は感謝するばかりです。
今でも揺るがない「独立採算」の考え
30億円の赤字をどうこう言うのではなく、むしろ50億円くらい負担すればもっと強いチームができて常勝軍団を形成できたかもしれない。ファンの皆さんや監督、選手、球団関係者には申し訳なく思います。
ただ、その考え方自体が間違っていたとは思っていません。今でも、球団は独立採算が取れて黒字である方がいいと考えています。親会社の業績に左右されないという点もありますが、やはり興業という事業ですから。
ビジネスは収益拡大を追求するからこそ、市場も大きく育っていくわけです。私が独自採算にこだわった理由の2つ目がここにあります。
赤字で親会社に頼っているようでは…
これはオリックスという1つの球団だけの話ではありません。プロ野球全体が活性化し、大きなビジネスとして成長していくために必要なステップです。