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イチローからの一言に、オリックス前オーナーは言葉を失った…“メジャー流出反対派”宮内義彦が明かす、チームの至宝のMLB挑戦を認めた理由
posted2024/02/10 06:00
text by
宮内義彦Yoshihiko Miyauchi
photograph by
AFP=JIJI PRESS
低迷期に感じる後悔
日本一になったシーズンの翌年から、オリックスはじわじわと下降線をたどっていきます。97年は2位、98年と99年は3位になり、2000年には4位と初めてBクラスへ転落しました。
チームの成績が緩やかに落ちていく中でも、イチロー選手は孤軍奮闘してくれました。前人未到の7年連続首位打者を獲得。チームの成績が振るわない中でタイトルを獲得し続け、一頭地を抜いていることを見せつけました。
今にして思えば、この時期、私はオーナーとしてもっとチームに関わっていればよかった。資金を出して変革を起こすなど、やれることはたくさんあったはず。ですが、私の頭の中では「球団経営の黒字化」が優先課題としてありました。
イチローのFAがささやかれる
当時のパ・リーグは多くの球団が赤字だったと思います。それが当たり前だったのですが、何とか変えたかった。球団には口を酸っぱくして、何度も収支の改善を求め続けた。それが、結果としてチームの弱体化につながってしまった。
私はオーナー時代、選手1人とだけ特別に会うことはしないと決めていました。それはイチロー選手も同じ。球団を通じてイチロー選手の状態などを聞くことはありましたが、あくまで間接的に、です。選手たちとは時々、激励会やパーティー、会食などの場で話すぐらいです。
そうした中で、イチロー選手のメジャー志向がメディアでささやかれるようになってきました。私自身、フリーエージェント(FA)になれば、それは選手の権利でもあるので仕方がないと思っていました。
イチローは何と言っているのか、聞くと…
球団とイチロー選手はたくさん話をしていたと思います。ただ、私のところまでは話は上がって来ませんでした。2000年のある日、当時の球団社長だった岡添裕さんから電話がありました。「イチローがどうしてもメジャーに挑戦したがっている」と。