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「髪型は自由」「伸ばしてもいいよね?」“女子バレー暗黙のルール”に疑問を抱いた古豪バレー部の改革「以前は耳にかかったらダメだったけど」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2024/01/11 11:03
“大エース”笠井季璃(中央)を擁し、3位と躍進した旭川実業高。部内のルールも練習も主体性を持って取り組んできた
石崎は肩につくボブヘアで、よく似合っている。高校3年生なのだから、校則の範囲内で好きな髪型にすればいいのだが、運動部、特に女子バレーボール部で全国大会の上位進出を果たすチームのほとんどどころかほぼ全員がショートヘア。学校によっては、ほぼ全員が同じ髪型なのではないかと錯覚することすらある。
だが、旭川実業はそれぞれバラバラで、肩まで髪を伸ばす選手が石崎以外にも数人いた。春高のベスト4をかけた現場では妙に新鮮に映ったので、さらに質問を投げると、屈託のない笑みを浮かべてこう言った。
「バレーをしていると短いのが普通だと思うし、私が入学した頃は耳にかかったらダメ、っていうルールがあったんです。でも、そのルール通りやっても勝負に関係あるか、と言われたら関係ない。だったら、髪の毛が短くなくてもいいよね?と、今の3年生独自の発想で、伝統を変えていこうという話になりました」
そもそも、なぜショートが多いの?
バレーボールでは身体の一部がネットに触れば、タッチネットの反則を取られ、相手に得点を献上する。何よりプレー中には汗もかく。邪魔にならないように、とショートヘアにしたり、ロングヘアでも試合中は束ねることが多い。
本来、プレーに支障をきたさない程度に好きな髪型をすればいいはずなのだが、伝統という暗黙のルールが存在するのも事実だ。
とはいえ、時代は変わった。バレーボールのルールやスタイル、ウェアも変わったように、いくら伝統とはいえ、変えてもいいものもあるのではないか――選手だけでなく、“改革”を打ち出すのは旭川実業を率いる岡本祐子監督だ。
同校で主将も務めたOGで、早稲田大を卒業後に東洋紡績や栗山米菓で選手として活躍。2010年に母校の監督に就任した。自身も現役時代にさまざまな“伝統”に倣って来たが、指導者になってさまざまな矛盾を感じたと振り返る。