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「髪型は自由」「伸ばしてもいいよね?」“女子バレー暗黙のルール”に疑問を抱いた古豪バレー部の改革「以前は耳にかかったらダメだったけど」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2024/01/11 11:03
“大エース”笠井季璃(中央)を擁し、3位と躍進した旭川実業高。部内のルールも練習も主体性を持って取り組んできた
「言われた目標を頑張ることはできるけれど、自分で何をするか考えろ、と言われたらわからない。選手を終えた後、私もまさにそうでした。だから監督になってからは、自分と同じ経験をしないように、選手たちには高校生の頃から自主性や主体性を持ってほしいと思ってきたんです。特に近年はいろいろなことが変化している。大切な伝統はもちろん大事にしながら、必要ないものは切っていけばいいじゃないか、というものの一つが髪型の変化でもあるんです」
選手たちの自主性を重んじ、意見を尊重する。それは髪型だけでなく、バレーボールも同様だ。試合に向け、相手の対策を練り、ブロックやレシーブがどこに入るか。データをもとに戦術を立てるが、試合になればその通りに行くとは限らない。もちろん岡本監督からも指示を出すが、その前に選手から「変えたい」と要求してくることが多い、と笑う。
「ここじゃなくて、別のコースに跳んでいいですか?って。選手がそう言うならば、それは現場が判断することだからオッケーだよ、と尊重するし、むしろグッドだよ、と。来ないところにいつまでも跳んでいたら負ける。選手が一番わかっているんです」
春高やインターハイでの優勝を誇り、日本代表やVリーグに多くの選手を輩出した伝統校とあって、変化を歓迎する声がある一方、それに対して反発する声も上がる。特に見た目でわかる髪型に対しては、後者の声が大きかったのも事実。自主性を重んじる選択が正しかったことを示すためには、結果を出すしかなかった。
だから、1月開催となった春高では初めてセンターコートに立った意義は大きい。
「ベストを尽くした」「変えたからには結果を」
準決勝・下北沢成徳戦では、2セットを連取され、第3セットも9対11と追いかける展開を強いられたが、エース笠井が「自分に全部持ってきて」と躍動。猛打で追い上げて24対24のデュースに突入したが、最後はバックアタックがネットにかかって24対26。直後に笠井はコートに倒れ込み、両手で顔を覆った。3日間で4試合、しかも3回戦と準々決勝がダブルヘッダーという良識を疑う過密日程にもひるまず立ち向かった大エースに、会場中から惜しみない拍手が送られた。
惜しくも決勝進出は逃したが、堂々の3位。「ベストを尽くした」と岡本監督は胸を張る。
「変えたからには結果を残さなければならない。かなりのプレッシャーがありました。いいところは大事にしながら、時代と共に変わっていく。これからのために、女子は、男子は、ではなく、みんなで頑張っていきたいですよね」
髪型も伝統も。選び、つくるのは自分自身だ。