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「渋野が肩を震わせ泣いていた」渋野日向子(25歳)が悩まされた“職業病”…カメラマンが見た米ツアー2年目の洗礼「“練習熱心”が災いして…」
text by
南しずかShizuka Minami
photograph byShizuka Minami
posted2023/11/28 06:00
アメリカに主戦場を移した2年目、負傷の影響で思うようなシーズンを送れなかった渋野日向子(25歳)
「私の場合は何をやっても痛みが引かなくて、引退を決めた要因になりました。親指は筋トレで鍛えられない箇所で、ゴルファーにとってすごく繊細な箇所。注射して炎症を抑えたとしても、痛みが引くまで安静にしたとしても、同じような打ち方で打っていたらまた負荷がかかる。再発する可能性がすごく高いんです。解決法としては、クラブの握り方やスイングを変更して痛みが出ないように工夫することや、専属トレーナーに同行してもらうなど日頃からのケアが大切になります。自分に合う対処法が見つかるまで、“やれることは全部やる”しかないという感じです」
負傷の時期などを本人が正確に明かしていないため、「あくまで推測になりますが」と前置きした上で、片平はこう考察する。
「渋野選手は昨オフから今季の序盤戦にかけて、スイング変更に取り組んでいました。特徴的だったのは、トップの位置が高くなったこと。ただ、トップの位置が高くなれば、それだけ左手親指への負荷は大きくなる。渋野選手はすごく練習するタイプなので、知らず知らずのうちに負荷が蓄積されてしまっていた可能性があります」
「駐車場で肩を震わせて泣いていた」
ツアーから長期離脱するような重傷に至らなかったのは不幸中の幸いだっただろう。試合を欠場することなく、6月上旬には左手親指から手首まで巻いていたテーピングを外した。負担のかからないようにクラブの握り方を変える、トップの位置を低くするなど、模索しながら戦いを続けてきた。
だが、6月の「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」の試合前では「まだ掴めたとは言えないですけど、色々と試しながらやっていかんとなーって感じです」と話しており、痛みや違和感と向き合いながら“最高峰の戦い”に臨む過酷さを痛感していた。「いろいろ考えて、自分に期待がもてない」と本音を漏らしたように、シーズン中盤から終盤にかけては下位に沈むことが多く、ドライバーの飛距離は約10ヤードも落ちてしまった。片平は言う。
「(スイングは)『これだ!』というものが見つかったとしても、それがちゃんと自分のものになるまでに時間はかかります。シーズン終盤は予選落ちしたくないというプレッシャーがかかっていたのかショットが力むことが度々ありました」
2週連続となる予選落ちを喫した10月、テキサスの青空の下、思い通りのゴルフができない不甲斐なさに打ちひしがれてか、渋野は駐車場で肩を震わせてひとしきり泣いていた。