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甲子園の風BACK NUMBER
名門・横浜高野球部“パワハラ解雇”の指揮官が神戸の新興校で挑む「新スタイル」…解任後は「自分を見つめ直す時間に」《YouTubeで野球動画制作も》
posted2023/11/28 06:02
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Fumi Sawai
神戸の市街地を見下ろせる神戸市北区の高台に、彩星工科高校の「神戸アスリートベース」がある。
サッカー部、ラグビー部、テニス部などの運動部のグラウンドが集結する施設で、甲子園と同じ黒土を用いた両翼100m、中堅122mの広大な野球場や室内練習場も含まれる。
「来年の2月ごろに、寮が完成するんです。これだけの施設を揃えていただいて本当にありがたいですね」
野球場の左翼側に建設中の建物に目をやって発した平田徹監督の声が、時折吹く強い秋風の音と重なった。
「神戸はすごく住みやすいですね。緑が多くて山と海が近い。都会ですし、どこにでも行きやすいです」
ゆったりとした口調で現状を明かす。22年4月に村野工業(当時)に野球部顧問として赴任し、同年7月に野球部監督に就任した。
名門・横浜高監督として甲子園に連続出場も…
平田監督は横浜高校OBで大学を卒業後、コーチを経て10年に部長、15年から監督を務めてきた。
16年から3年連続で母校を夏の甲子園に導くも、19年9月にパワハラ指導があったとして監督を解任されている。
それから約2年半の時を経て、現場復帰した経緯を平田監督はこう明かす。
「横浜高校時代の同級生で法大からJR東日本に進んだ松浦(健介)っていうのがいて、大学在学中に助監督を務めていたのが、今、彩星工科野球部の総監督の田中英樹だったんです。僕が横浜高校を解任されてから、何とか高校野球界に戻したいと松浦がアンテナを張ってくれて、大学時代の師弟関係の田中総監督と僕が繋がることができたんです。そこで、村野工業高校が野球部を強化するということで声を掛けてもらったんです」
もちろん、母校の監督を解任された直後は心的なダメージはあった。だが、現場を離れている間は自分を見つめ直す時間に充てた。
「立ち止まって学び直したり、整理したり……これまでの経験を分析したりしました。体系化と言ったらおかしいかもしれませんが、現場にずっと立っていると走りっぱなしで立ち止まって検証したり、振り返って反省したりすることも少なかったので。そういうことをじっくりすることはできました」