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「コラァ。お前ら何しとんじゃ!」星野仙一が阪神コーチ陣に激怒…試合後の血圧「210」壮絶だった闘将「金本知憲に『頼むわな。判押せ』」
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岡野誠Makoto Okano
photograph byJIJI PRESS
posted2023/11/28 11:02

2002〜03年、阪神の監督を務めた星野仙一
「ウォーミングアップに入った時、コーチ陣が固まって雑談しとった。それに気づいた星野が大声で『コラァ! 一番大事なアップの時におまえら何しとんじゃ! 見とったれ!』って怒鳴ったんや。コーチは戦々恐々とするし、選手もビックリしていた。星野の一声で、雰囲気がコロッと変わってきたわけよ」
「メディアは戦力」卓越したマスコミ活用
他人を注視する闘将は、自分の言動がチームに多大な影響を及ぼすと知っていた。ブルペンに赴いても「自分がいると投手陣が張り切りすぎてしまう」と早めに場所を移った。甲子園球場と同じような芝と土を使ったグラウンドキーパーには直接、感謝を述べていた。
「練習中、星野は絶対にポケットに手を入れなかった。選手は首脳陣の動きに敏感だからな」
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星野は野村の真逆を行く監督だった。知将が悩まされたメディア対応も見事だった。マスコミからチームのスローガンを募集し、阪神再建策のレポートまで書いてもらった。在阪マスコミへの挨拶回りもした。順番は、各社の担当キャップにクジ引きをさせて決めた。細部まで気を遣い、「メディアは戦力」と言った。
「キャンプ中もホテルの大きな広間を借りて、報道陣全員の前で話す。それ以外ではしゃべらんのよ。だから、どの新聞にも同じコメントしか出ない。特定の新聞に誰かの悪口が載らない体制を取った。野村さんは誰彼構わずよく話していたから、余計なことを書かれた」
まさに命がけ…試合後の血圧「210」
阪神から不協和音が消えた。一方、過度なストレスを抱えた星野の体調は思わしくなかった。巨人との開幕戦を井川慶の完投勝利で飾ると、すぐに監督室に戻った。通常135の血圧は210を超えていた。
「本当に命懸けやったんよ」
阪神は開幕7連勝で序盤、首位を走る。しかし、矢野輝弘、赤星憲広など故障者が続出。6月以降は勝てなくなり、4位に終わった。肉体的にも精神的にも弱さを感じた星野はオフに24人もの入れ替えを断行した。