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野村克也「チームに迷惑だ」批判された選手のボイコット…名将はなぜ阪神で苦しんだのか? 致命的だった“誤算”「(次は)星野がいいと思う」
posted2023/11/28 11:01
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph by
JIJI PRESS
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「星野(仙一)で2003年に優勝したけど、野村さんが間違いなく下地を作ったと思うよ。ただ、当時は選手と上手くいってなかったな。ボヤキが阪神には合わなかった」
雑談が“告発”に…大豊泰昭の舌禍騒動
野村監督の就任早々、大豊泰昭の舌禍騒動が起こった。ナゴヤ球場時代の1994年に38本塁打、107打点で二冠王に輝いた中日の主砲は、広くなったナゴヤドームで調子を崩し、98年に阪神に移籍。チーム最多の21本塁打を放つも、打率.231と安定感に欠けた。オフには年俸が1億8000万円から1億2600万円にダウン。大幅な減額に対し、週刊誌にこんな言葉が掲載された。
〈交渉の後の記者会見で、『僕らが減らされた金額分はサッチーがもらうのか』と、怒りにまかせて野村監督夫人を批判してしまった〉(※1)
記事自体は小さかったが、在阪スポーツ紙が取り上げ、瞬く間に広がった。大豊はのちに述懐している。
〈この話はたしかに私の口から出たものだった。だが、それはあくまでも冗談。告発などというものではない。しかも普段顔を合わせている担当記者との雑談の中でしゃべったものだった〉(※2)
過熱するタイガース人気の“怖さ”
大豊から謝罪を受けた沙知代夫人は「大事な時に何を気にしているのよ。そんなことより豪快なホームランを打って野村克也を助けてあげて」(※3)と温和に対応した。大豊はこの一件で、野村就任で過熱するタイガース人気への危惧を抱いた。
〈中日時代には、こんなことはなかった。野村さんが監督になることで、だれもが商売になる言葉を狙っている。みんな疑心暗鬼になり、チームの和が乱れてしまう危うさがあった〉(※4)