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「コラァ。お前ら何しとんじゃ!」星野仙一が阪神コーチ陣に激怒…試合後の血圧「210」壮絶だった闘将「金本知憲に『頼むわな。判押せ』」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byJIJI PRESS
posted2023/11/28 11:02
2002〜03年、阪神の監督を務めた星野仙一
「はっきり言うて、阪神はぬるま湯だったんよ。星野は馴れ合いの空気をなくすため、支配下登録の3分の1も動かした」
勝負の2年目…金本知憲の登場
トレードで日本ハムから下柳剛、中村豊、野口寿浩を移籍させ、メジャー帰りの伊良部秀輝、ドジャース傘下3Aのジェフ・ウィリアムスと契約。野崎球団社長はFA権を取得した広島の金本知憲を狙っていた。三宅は野崎から「金本についてレポートを書いてくれんやろか」と電話を受けた。
「今の阪神に足りないものを全て持っていると伝えた。金本は努力を重ねて這い上がった選手で、勝利への執念、どんな時もチームを一番に考える精神がある。星野は、同級生で仲の良い山本浩二(広島監督)との関係があるから、最初は獲得に乗り気ではなかった。『手を挙げていいか』と連絡したら、浩二は『出て行くなら仕方ない』みたいな返事をしたらしい。それで名乗り出たんよ。星野はほんま強引やけ。交渉の場で、3年9億円を提示して『おい、頼むわな。判押せ』って言うたみたい(笑)」
中日を下回る条件に(※1)金本が「押しますから、4年契約にしてください」と最後の抵抗をすると、星野は「わかった。4年12億円や」と即決した。
「星野は『躊躇したら、愛着のある広島に残留してしまうんよ』と言うてた。最初からいくらまで出せるかをフロントに掛け合っていたんでしょう。その辺が、星野が政治家と言われる所以や」
生え抜きだけでの変革は無理があった。金本は阪神の体質に唖然としていた――。
〈つづく〉
※1 星野仙一著『夢 命を懸けたV達成への647日』(2003年10月発行/角川書店)を参照