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「すみません…」涙のW杯から1年“格下続き”の2次予選、なぜ守田英正28歳は“本当に意識高く”いられるか「あえて僕はそういう言い方を」
posted2023/11/25 06:01
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Yohei Osada/AFLO
全ての涙に価値を見出すのは無謀である。その人物のその後の振る舞い次第では「あの涙は何だったのか!」と残念に思わされることもあるからだ。
その意味で、守田英正が流した涙はダイヤの価値があるかもしれない。彼は有言実行の男なのだ。
すみません…これからは1日も無駄にできないので
もう1年近く前になる。カタールW杯でクロアチアに敗れた夜、守田は悔しさに声を震わしていた。「カタールW杯までの4年間が終わり、次の北中米W杯に向けた戦いが始まりますが、どのように過ごしていきたいですか?」と問うたときだった。
「この4年、本当にあっという間で。自分は(W杯)予選から(代表に)入ってプレーしましたけど、本当に“いっときも”無駄にしていなかったですし……」
そこまで話すと、“ダイヤ”が地面に落ちないようにぬぐい、消え入りそうな声で「すみません……」と一言ことわってから、守田は続けた。震えていた声とは裏腹に、強い意志が感じられた。
「ホント、これからは1日も無駄にできないので」
カタールW杯が終わってからの守田の言動に触れていると、あのときの意思表明に偽りがなかったことがよくわかる。
彼のプレーが現在の日本代表を上手く機能させていることは、今さら触れるまでもないだろう。
例えば9月、敵地で4−1の大勝を飾ったドイツ戦。守田は本来ダブルボランチの一角を任されていた。しかし守田の前のポジションである鎌田大地(トップ下)は右サイドに出て行くことが多かった。すると守田はその動きに合わせ、左インサイドハーフのように振る舞うことでバランスをとった。10月のチュニジア戦で久保建英が前にいたときには、攻撃力に秀でる久保を前に押し出させるようなポジションをとっていた。
潤滑油のような守田の働きで、このチームは回っていく。
“格下”とあえて口に出した理由
さらに彼の仕事はピッチの中だけではない。チームの意識改革のカギも握っている。プレーでの貢献度が高いからこそ、そこは見逃されがちな部分ではないだろうか。彼の発言にしっかり耳を傾けていると、かつての本田圭佑の言葉を聞いているような気がしてくる。
それは何故なのだろうか——。