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難病の闘病中に気づいた「社会を変えてやろう」“らしくない”場所で骨髄バンクイベントを行うプロスノーボーダー 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2023/12/01 07:00

難病の闘病中に気づいた「社会を変えてやろう」“らしくない”場所で骨髄バンクイベントを行うプロスノーボーダー<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

――プロジェクトを始めた当初は反発というか理解されない難しさもあったのではないかと思います

「僕は6年ぐらい全国骨髄バンク推進連絡協議会というNPOの理事をやっていて、その時にこのイベントを独自に開催しようと企画しました。当時言われたのは、『骨髄バンクらしくない』と。『何でスノーボードなの? dazeくんがスノーボードしたいだけじゃないの?』って。それを聞いて、だからこそ自分が関わる意味があると思いました。もちろん骨髄バンクを作ってくれた先輩たちをすごくリスペクトしています。行政や国にアプローチする上で協議会の活動は絶対に必要。だから、彼らを変えるんじゃなくて、自分が新しく作るしかないんだなと思いました」

――スノーボーダーの間にもイベントの趣旨が理解されてきた手応えはありますか。

「この 13 年間でライダーも変わりました。初年度なんてライダーも『なんで献血と骨髄バンクとスノーボーダーなの? なんかダセえな』みたいな感じでしたから(笑)。今年のライダーは全然違いますよ。『自分たちのライディングによって献血やドナー登録を獲得できて、誰かを助けることに繋がる素晴らしいイベントです』と勝手に発信してくれています」

ライダーはカッコよく滑ってくれればいい

――ことさら荒井さんからお願いしなくても自然にそうなっていると。

「僕がイベント開始時にライダーに伝えているのは『君たちはカッコよく滑ってくれればいい。それで人が魅了されて集客できて、このイベントの趣旨を理解してくれるようになる。その果実は僕が収穫していくので、みんなはただカッコよく滑ってくれ』ということです。あと『継続する上でちゃんとルールは守ってね』と(笑)。無理やりお願いしても言わされている感じがしてしまうし、自分事として発信してこそ初めてパワーが出る。それでもライダーたちは勝手に告知してくれるし、献血やドナー登録もしてくれているんです」

――プロジェクトの将来像はどのように考えていますか。

「僕が目指しているのは、SNOWBANKが必要ない社会を創ることです。SNOWBANKがなくても若い人たちが自発的に献血やドナー登録をしてくれたり、スノーボードのイベントを作ってスノーボードを盛り上げてくれたら、言うことはありません。そんな社会をいつか実現させたいですね」

荒井 daze 善正Arai daze Yoshimasa

1979年3月10日、東京都生まれ。16歳の時にスノーボードを始める。24歳からプロスノーボーダーとして国内外で活動。2005年「慢性活動性EBウィルス感染症」を発症し、2008年に骨髄バンクを通じて骨髄移植。現在はプロスノーボーダーとして復帰。また骨髄バンクの普及やドナー登録推進のための活動にも精力的に取り組んでいる。2009年自らの体験を綴った『NO SNOWBOARDING NO LIFE スノーボードがくれた命』を出版。

アスリートの社会貢献活動を推進するHEROs。詳しくはこちら

https://sportsmanship-heros.jp/

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