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スポーツ界が社会をリードする未来へ。「HEROs AWARD 2023」受賞者が、社会貢献をする理由。
posted2023/12/28 07:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Tomosuke Imai
日本財団がアスリートとともに社会課題解決の輪を広げていくことを目的とする「HEROs~Sportsmanship for the future~」では、優れた社会貢献活動のロールモデルたちを表彰する「HEROs- AWARD」を2017年から行なっている。
7回目の今回は、自薦および他薦によりノミネートされた366の候補の中から、プロスノーボーダーの荒井daze善正さん、元競泳日本代表の伊藤華英さん、プロ野球選手の和田毅さん、北海道日本ハムファイターズ、アディダス ジャパン株式会社、さらにアーティスト部門として歌手の一青窈さんが受賞し、12月18日に都内で開催された「HEROs AWARD 2023」にて表彰された。
出席者は全員正装で
会場には社会貢献という軸を共有する多くのトップアスリートたちが集結した。出席者全員がタキシードやイブニングドレスなどの正装で集う華やかな場での表彰は、“社会貢献は本来、格好いいものなんだ”という思いを表現するためのスタイル。アワードを提唱した中田英寿さんやプロジェクトのアンバサダーを務める五郎丸歩さんらも集う中、受賞者たちは晴れやかな表情で壇上に上がり、活動が評価された歓びや今後に向けての思いを語った。
表彰式の後は中井美穂アナウンサーの進行により、受賞アスリートによるトークセッションが行なわれた。
ステージに登壇したのは、自身が骨髄移植を伴う闘病生活を経験したことをきっかけに、プロスノーボーダーとしての立ち位置から骨髄ドナー登録や献血への協力者を増やすためのプロジェクトを立ち上げた荒井さん、自分自身の投球数や勝利数など成績に応じた本数のワクチンを開発途上国の子どもたちのために寄付する活動を行なっている和田さん、女子学生アスリートの生理とそれに伴う体調変化という課題と向き合い、啓発や情報発信をする活動を行なっている伊藤さんの3人。
中井アナの指名で、まずは荒井さんが2011年11月に東京・代々木公園で「スノーボードコンテストと骨髄バンク登録」を行なう『東京雪祭』をスタートさせた時の様子について語り始めると、次々と出てくる興味深いエピソードに、出席者たちが頷きながら聞き入る様子が見られた。
荒井さんが語っていたのは、2010年に既に会場を確保していたものの、2011年3月に東日本大震災が発生したことで一時は開催することを迷ったこと。「骨髄移植の治療を必要とする患者さんはどんな時にもいる。やはり、行動しなければいけない」と覚悟を決めて協賛社募集を開始したところ、電話をするたびに「震災関連でなければ協力できない」と断られたこと。それでも苦労の末にどうにか開催にこぎつけると、スノーボードを見るのが目的で来場した多くの若者が献血やドナー登録をしてくれたこと。