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藤井聡太の「初手お茶」「おやつ」…管理栄養士はどう見る?「朝が弱い藤井さんには効果的な戦略」「棋士の消費カロリーは…」

posted2023/11/11 06:01

 
藤井聡太の「初手お茶」「おやつ」…管理栄養士はどう見る?「朝が弱い藤井さんには効果的な戦略」「棋士の消費カロリーは…」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

長時間の対局となるタイトル戦で、注目を集める藤井聡太の食べたもの、そして飲んだもの。そのオーダーを管理栄養士が見ると…

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齋藤裕(NumberWeb編集部)

齋藤裕(NumberWeb編集部)Yu Saitou

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Keiji Ishikawa

 1982年、85年、86年と昭和のプロ野球の世界で3度の三冠王を獲得し、監督としてもリーグ優勝4回と日本一1回を成し遂げた落合博満はアスリートの肉体についてこう語っている。

「殊にスポーツ選手にとって大切なのは『体技心』の順になると考えてきた。要するに、食べることも仕事なのである」(落合博満『戦士の食卓』岩波書店、2021年)

 1996年、当時の将棋の全タイトル七冠を手にし、平成の間にタイトルを計99期保持した羽生善治は棋士の肉体についてこう語っている。

「長時間の対局で消耗し疲労する棋士とアスリートとの共通点はあると思ってます。肉体的な要素は16歳で初めて(持ち時間各6時間の)順位戦を夜中まで指した時から感じてきましたから」(『Number』2021年1月7日発売号)

 極度の集中状態で長時間の思考に沈み込み、最善手への探求を続ける棋士という職業。数々のタイトルを手にしてきた2人の言葉にある通り、棋士というアスリートにとっても食事は重要であり、長丁場のタイトル戦であれば、なおさら食べることの重要性も増してくる。10月、八冠を達成した藤井聡太が選び取ってきた食事から読み取れること、学ぶべきことはあるだろうか。タイトル戦の全食事について、管理栄養士に話を聞いた。(全3回の第2回/前回は#1へ)※肩書はすべて当時

チェスプレーヤーのカロリー消費の研究

「将棋はなかなか研究が進んでいませんが、心拍数を測定するアメリカの民間会社が行ったチェスにおける消費カロリーに関する調査では、21歳のチェスプレーヤーが2時間座ってプレーしたところ、560kcalを消費しているという結果が出ました。これはテニスを1時間プレーした際のカロリー消費量とほぼ同じ数値です。よく将棋の喩えとして“頭脳の格闘技”と言われますが、これは決して比喩的な表現でなく、本当に棋士はトップアスリートレベルの消費を行っているんです」

 力強くそう語ってくれたのは、圓尾和紀さん。登録者数が15万人を超えるYouTube「カラダヨロコブ」チャンネルで食事面の注意すべきポイントやあるべき食生活などの発信を行っている管理栄養士だ。

棋士は見た目以上にカロリーを消費している

 自身も囲碁でアマチュアの大会出場歴がある圓尾さんは、実感に近い数値としてこの研究を紹介してくれた後に、「参考までに」と、こんな研究結果も教えてくれた。

「スタンフォード大でのチェスの最高位のプレーヤーを対象にした消費カロリーに関する研究では、トーナメントをプレーするプレーヤーは心拍数が3倍近く上昇し、血圧も上がり、1日に消費するカロリーは6000kcal、グラムに換算すると900gに達する可能性があるという結果が出ました。これは実感よりかなり高く出ている数値という印象ですが、『見た目以上にカロリーを消費している』ということは間違いなく言えると思います」

間食は好手か?

 では、藤井八冠の食事はどのように見て取れるのか。「第一感」を聞いてみた。

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