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「1人残らず楽しませたい」KAIRIが“無期限休業”直前に明かした本音…記者が見た、若手レスラーへの愛「みんな自分にしかない魅力がある」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/09/30 17:00
GLEAT新宿FACE大会に出場したKAIRI。会場が狭く感じられるほどの存在感を放っていた
KAIRIにとって日本復帰にはどんな意味があったのか?
スターダムでワールド・オブ・スターダム、ワンダー・オブ・スターダムの2大タイトルを獲得したKAIRI。WWEでも女子タッグ王者となった。その実績からすれば「今の選手は物足りない」、「私の時代は」と上からものを言うこともできたはずだ。そういう言葉を望んでいるマスコミやファンもいただろう。しかしそれは性に合わない。闘ったり組んだりしなくても、選手のいいところを見つけたら声をかけた。日本での試合に強い刺激を受けてもいた。
「どの団体の選手も、フリーの選手もレベルが高いですね。みんな志が高い。“もっと強くなりたい、いいものを見せたい”という気持ちを感じます。そこはWWEも日本も変わらないです。日本に戻って、逆に私が刺激をもらって燃えましたね。みんなと切磋琢磨していくことができた。最高の経験でした。
日本のプロレスは指の取り合いだったり、より細かい動きがあるんです。技術の細かさ、基礎の正確さがあって“闘いとは何なのか”、“いい選手ってどういうものなのか”という部分も考えさせられました。日本に戻って試合をしたことは、次のキャリアにも間違いなく活きますね。100億パー活きます」
そんな話を聞いたのは、GLEAT新宿FACE大会でのこと。新宿FACEはキャパ500ほどの会場だ。後楽園ホールでも感じたのは、KAIRIの“サイズ感”。動きや目線から醸し出す雰囲気があまりにも大きく、会場が狭く感じた。考えてみればWWEでは毎週、観客1万人クラスのアリーナで試合をしてきたのだ。WWE最大のイベント『レッスルマニア』では、8万人の前で試合をした。
「1人残らず楽しませたい」
そのKAIRIが、撤収後のガランとした新宿FACEで「どの会場も一緒です」と言う。
「久しぶりに小さい会場で試合をすることになった時は“難しいかな”と思ってたんです。でも試合は試合ですね。大きかったり小さかったり、違いがあるから面白いというのもありますけど、根底は“来てくれたお客さんを1人残らず楽しませたい”という気持ち。リングからみんなの表情を見るんです。チケットを買って見に来てくれた人に、チケット代以上のものを返したい」
新宿FACEでは、試合後のマットに手をついて佇む光景が印象的だった。リングを降りると客席に近づいてファンと目を合わせる。どの団体でも、会場の大小も、選手のキャリアも関係なくプロレスを愛し続けるレスラーの姿がそこにあった。いつでも、どこでもそうだったからアメリカでも成功できたのではないか。
「名古屋ではこれまで得てきたものと、これからに向けた熱意も見せたいです。ファンのみなさんにも選手のみんなにも感じてほしい。そのためには自分が楽しむことですね。やっぱりプロレスが好きなので。プロレスへの愛を出しながら自分が楽しめたら、それが一番だと思います」