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「凄い性格してんな」スターダム注目の新人・天咲光由(20歳)が見せた“スター性”…ジュリアを驚かせた“まさかの行動”とは?
posted2022/07/28 11:03
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
どれだけ痛めつけられても、何度倒れてもそのたびに立ち上がる。それがプロレスの真髄だと言うレスラーは多い。
格闘技に限らず他のスポーツでは、まず相手の攻撃を未然に防ぐことが第一だ。野球で言えば、その究極の形が完全試合。だがプロレスではそうならない。相手の攻撃を受け、倒れ、立ち上がるタフさや勝利への執念こそが重要なのだ。付け加えるなら、それらを観客に“見せる”こと、そうして感情を揺さぶることがプロレスの一つの目的と言える。
そうしたプロレスのイズムのようなものを、レスラーは新人の頃から叩き込まれる。女子プロレス団体スターダムの新鋭・天咲光由(あまさきみゆ)は、まさにそれを学んでいる最中だ。
試合から分かる“アイドル性”
今年3月のデビュー戦から、若手主体興行『NEW BLOOD』のメインイベントという破格のチャンスをもらった。相手は前ワールド・オブ・スターダム王者の林下詩美だ。リングネームは「てっぺんに咲く」という野望を表している。
体も大きくないし、目立ったスポーツ歴があるわけでもない。ただ練習で身体能力の高さや気持ちの強さが認められての大フィーチャー。林下からのスカウトで、デビュー戦直後にユニット「Queen’s Quest」加入も決まった。
実際に試合を見て、確かにこの選手は大器だと実感できた。必死でありながら技は一つひとつが正確。我を忘れて動きが雑になるようなことがない。加えて華というのかアイドル性というのか、入場シーンから観客の目を惹きつけるものがある。
怒りも露わに「やれるって言ってんだろ!」
すでに自力勝利もあげている天咲。7月8日の『NEW BLOOD 3』(品川インターシティホール)では「超新星5番勝負」がスタートした。プロレス界では、期待される新鋭に「○番勝負」を課して成長を促すことがしばしばある。試練にしてチャンスだ。天咲の初戦の相手は、一昨年の女子プロレス大賞を受賞したジュリアになった。
ジュリアは、会見の時点から天咲を厳しく攻め込んだ。この試合の会見は、第1弾カード発表会見と全カード発表会見の2度にわたって行なわれている。その「特別待遇」ぶりをジュリアは突いた。期待に応えるだけの試合が見せられるのか、というわけだ。
天咲はなかなか言葉が出てこない。このあたりは普通の新人といったところ。「期待されてるのが分かってるの?」と聞かれれば「分かってます」、「やれんの?」と言われれば「やります」と答えるしかなかった。それでも何度も何度もジュリアに挑発されて「やれるって言ってんだろ!」と怒りを露わにした。
それこそがジュリアの目的だったはずだ。行儀のいい、通りいっぺんのコメントではファンに何も伝わらない。それなら自分が“超新星”の怒りを引き出してやろう、と。