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「1人残らず楽しませたい」KAIRIが“無期限休業”直前に明かした本音…記者が見た、若手レスラーへの愛「みんな自分にしかない魅力がある」
posted2023/09/30 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
元WWEで昨年から古巣スターダムを中心に活動してきたKAIRIが、新たなフェイズに入る。
9月いっぱいでの無期限休業。米マット復帰の噂もあるが、本人は明言を避けている。同時に、この休業は引退ではないとも。次のステップに向けた準備期間だ。
ともあれリングともファンともしばしのお別れ。休業が発表されたのは8月だが、5月頃には決意していたという。そしてそれ以降、スターダム以外での試合に積極的に参戦している。
現代日本女子プロレスにおいて最も豪華なカード
6月14日には小橋建太プロデュースの『Fortune Dream 8』(後楽園ホール)に出場。ウナギ・サヤカとのシングルマッチで勝利した。
「いろんな団体に面白い選手がいると思うので」
後楽園のバックステージで、KAIRIはそう言っていた。8月4日には今年、日本マット復帰を果たしたSareeeと“元WWEタッグ”を結成して彩羽匠&中島安里紗と対戦。9月に入ると老舗・全日本プロレスのリングにも上がった。スターダムでともにベルトを巻いた安納サオリと組み、相手はウナギとSareee。現在の日本女子プロレスにおいて最も豪華なカードと言っていいだろう。
特にウナギは、KAIRIがスターダムのリングに戻って最初の試合で対戦した相手。ウナギが“ギャン期”と称しスターダムから離れて活動するようになってからは、一緒に練習したこともある。
小橋興行でも全日本でも勝ったのはKAIRI。しかし何度も手を合わせ、ウナギの成長を肌で感じた。
「ウナギちゃんは“ギャン期”になって自分で道を切り拓いてきただけあるなと思いました。背負うものがあるというか、“私がやるんだ”という覚悟が見えるんです。気持ちが技に乗っていますね」
KAIRIの目的は“勝つことだけではない”
スターダム復帰に際して、KAIRIは「可能ならスターダムの選手全員と闘いたい」と言っていた。結果として初代IWGP女子王者となったが、日本のリングで目的としていたのは勝つこと、ベルトを巻くことだけではなかった。
「“自分はこれができない”とか“あの選手はいいなぁ”みたいに悩むことって多いんですよ、選手は。特に今のスターダムは人数が多いですし。その気持ちも分かるんです、私自身が落ちこぼれだったから。同期で自分だけプロテストに落ちて再試験だったり、デビューしても全然うまくいかなかった。空回りしてるとかセンスがないと言われて。
自分はダメな人間、不器用で空回りしてみんなに迷惑かけて、いらない人間だと思ってたんです。でも人って変われるんですよ。覚醒する瞬間がある。悩んでいる選手にそれを伝えたい。試合をすることで“あなたもできるよ”って。人から何を言われても、自分の可能性をあきらめないでほしい」