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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「冨安健洋の復帰が攻守両面でファクターに」中村憲剛がドイツ戦“完勝の理由”を徹底解説「あのドイツを手のひらで転がしている印象さえ…」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2023/09/20 11:08
ドイツ戦完勝の大きな要因となった冨安健洋。中村憲剛氏は「見事なパフォーマンス、抜群の存在感」と高く評価した
そこで時間ができれば、前へボールを供給できます。前向きな選手をどう作るかという観点で言うと、ドイツ戦の2人のビルドアップは素晴らしいものでした。
冨安はケガなどの影響で3月、6月の試合は出場していません。第二次体制では初めての合流で、本人は「存在感を見せないといけない」と話していました。危機感を抱いたなかでのドイツ戦だったようですが、その危機感からくる見事なパフォーマンス、抜群の存在感でした。
最終ラインを統率し、最後のところで1対1で負けない。レロイ・サネの抜け出しを、スライディングでブロックする場面もありました。2点目の起点となる左足のロングパスも見事でした。相手を見て縦パスをつける、相手の矢印に乗らないボールの動かし方をするなど、攻撃においても彼の復帰はドイツ撃破のファクターになっていました。
「4-2-3-1」をもう少し見たかったが…
それでも前半は失点シーンを含めてレロイ・サネに、何度か危ないシーンを作られました。しかし、試合を通じてこれまで言われていたフィジカル的な劣勢は感じさせていません。球際で負けることはなく、そもそも攻撃では球際の攻防を作らせないボールの動かし方や持ち方をする、適切な立ち位置を取る、といったことも実行されていました。
選手の立ち位置はよく考えられていました。鎌田がトップ下をスタートポジションとしながら、右インサイドハーフのように振る舞って伊東純也の近くでプレーする。それを見て守田が左寄りの高い位置を取り、遠藤をアンカーとした4-3-3のようになる時間帯もありました。
前半は2対1で折り返すことになりますが、日本の戦いぶりは素晴らしいものがありました。ハーフタイムではこの日本に対してドイツがどう動くのかを興味深く見ようと思っていただけに、先に日本がシステムを変えるとは予想していませんでした。
個人的には、後半も4-2-3-1でドイツにどこまでできるのかを、もう少し見たかったというのが率直な感想です。
サネにやられることを嫌ったのか、後半途中で交代する上田の足の具合なのか。色々な要因はあったにせよ、後半開始から5-4-1に変えて、サネのところにフタをしてきました。この判断は早かったですね。
三笘が左ウイングバックに落ちたので、ボールを奪う位置は前半より低くなりましたが、その一方で穴を埋めたぶん、サネに決定機を作られた前半のようなシーンはほぼなくなりました。